-bad end after-
□闇の中で
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鬼兵隊の所有する船の中
先日、河上万斉が新たに率いれた仲間のため造られた工場があった
工場は暗く、ランプの赤い光だけがちらちらと揺れている
「風琉」
二つの湯飲みに茶を淹れて、万斉はその光のほうへ呼び掛ける
振り返りもしない。名を呼ばれたことに反応して少女は少し肩をゆらしただけだ
「そろそろ休憩にせぬか。ずっとその調子でござろう、水分補給もしなくては」
「ありがとう、万斉。でもあとちょっとだから」
少女はそう呟くと、打ち込んでいた刀の最終確認をはじめた。万斉はその様子を複雑な想いで見つめていた。
彼女をそばに置きたいと思ったのは万斉、しかし彼女は平和を望んでいるのを知っている。彼女をここに連れてきたこと、正しかったのかどうか…
「うん…完成」
万斉が悩んでいると風琉は嬉しそうにほほえんだ。正確にはあまり表情に変化はないが、彼にのみわかるちょっとした違いがあるのだ。
「万斉、見て」
「ほう…これは素晴らしいな」
綺麗なその刀は桐箱におさめられている。万斉が持ち上げようとすると、ダメ、と制止される
「問題は、本当にうまくいくかと…量産…?」
「量産の件については拙者も考えよう。機能性に関しては…だれか実験体を用意いたそう」
万斉がどこから実験体を仕入れようか思索していると、風琉はくすり、と笑った
「その必要はないわ。実験なら、もうはじめた」
万斉は呆気にとられた。それから風琉の頭を優しくなでる
「お前は本当にしたたかだな。悩んでいた拙者が愚かに思える」