-ミテイミライ-
□#8 気づかないで
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「伊織!!」
だから、信楽さんと目があったときには驚いた。
「おーい、伊織ちゃーん?」
男たちに脅されながら歩く伊織にむかって信楽が繰り返し能天気に呼び掛ける
ことの次第に気づいてないのだ。
その声に、助けて!とすがりそうになった自分がはずかしい。
…自業自得。信楽さんを巻き込んじゃいけない。
「知り合いか?走れ!」
「は、はい…」
男たちにぐいぐいと引っ張られ、喉から小さく悲鳴がもれる。
それをみて、信楽さんが目を丸くする。
ようやく、私が連れ去られかけていると気づいたらしい
助けて。…来ないで。
相反する気持ちと戦いながら、必死で男たちについていく。
ようやく男たちの足がとまったのは、看板が壊されたバーのなかだった
背中を乱暴に押され、尻餅をつく。
恐怖ですくんでいたとき、バーの扉があいた。
「伊織」