迷夢録『うつろ』
□第三話
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私は自分の声を必死で抑えました。私は静かに泣いていました。眠れそうにはありませんでした。
ーーーガタガタガタッ
真夜中、泣きつかれて、それでも眠れずにいたときのことです。
「ひっ…」
障子が揺れて、私は軽く悲鳴をあげました。しかし、様子がおかしいことに気づきました。
風がありません。障子が揺れるとしたら、人為的なもののほかあり得ません。
「だ、だれ…?」
震える声で問いかけました。もしかしたら、お母さんかもしれない、なんて思っていたような気がします。幽霊でもなんでもいい、だれかがいることに安心しました。
「だれでもいいだろ」
障子を揺らした人影は、ぶっきらぼうにそう告げました。