迷夢録『うつろ』
□第二話
2ページ/5ページ
晋助の目は常に鋭く私をとらえていました。
「さあさあ、もう夜ですよ。みんな布団に入りなさい」
夜になると松陽に促されてみんながバラバラになっていきます。その時間、私はいつも心細くて震えていました。夜は空腹と絶望を思い出させました
「七瀬さんは私と寝ましょうか」
きっとそんな私にきづいたのでしょう。
毎日松陽は私の頭を優しくなでて、額をこつんとあわせてきました。
「…はいっ!」
松陽のそんな心遣いに幼いながらに気づきました。母親の温もりと同じものを感じて、私はだんだん、松陽に安心して心を開くようになりました。