迷夢録『うつろ』
□第八話
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ニィ、と天人の顔が歪みました。
「危ないっ!」
突然のことに驚いて動作のとまってしまった私にかわって、近くにいた青年が小さな天人を斬り殺しました
「あ、ありがとう…」
私が震える声で呟くと、青年は私が女だということに気づき驚いたようでした。しかし、すぐに顔を引き締めました。
「気を抜くな。まわりをよく見ろ。」
「…っ!」
見知らぬ青年に言われて気がつきました。なにか大きな動物がうごめいているかのように見えた私たちの軍は、すでに半数近くがやられていました。
私は初めて、むせかえるような悪臭が倒れた仲間の血の臭いであることに気がつきました。
「う…うぉえっ…」