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□アイオロスという男
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シオンの遺言もあり、教皇として玉座に座っている。
そして声なく呟くのだ。
一番罪深いのはこのアイオロスなのだがな…と。
オレを潔白と信じるサガや弟を思うと笑いが込み上げる。
教皇に選ばれなかった時のサガの姿を、この男がオレの手足となって働くのかという冷たい悦びが全身に溢れたあの瞬間を、今なお鮮明に覚えている。
人々に慕われ愛される天使の様な男がこのオレの前に膝をつくのだと、うかつにも驚きを隠せなかった。
だがそれは、サガが選ばれなかった―自分が選ばれた―驚きと解された。

そして、今。
サガは隣で笑んでいる。
この心に気付かずに。
13年を埋めるために己が知識を惜しみなく、その笑顔のようにそそいでくれている。
「なんて幸せなのだろうな、サガよ」
「ああ…そうだなアイオロス」
命あるオレに命あるお前が隣で笑いかけてくれる。

ハーデスの代わりにアテナが冥界を統べ、聖域にはライブラの童虎を除く11人の黄金聖闘士が揃っていた。
そう、老師がシオンと冥界に留まると笑って逝ったから一人足りない。
語りたい事が山のように有るのだと。友とはそういうものだと笑って…彼は旅立った。
ならばこの感情はどうなのたろう。
誰も気付か
ず歪みつづけるオレの感覚。

幸せなはずだ…サガを皆をまた騙せるのだから。
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