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□アイオロスという男2
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豊かな金の癖毛が眼の端で揺れるのをアイオロスは眺めていた。
何故ミロが自分に口付けをしているのだろうか。
訳がわからないと目を丸くするアイオロスから離れるとミロが冷たくいい放つ。
「サガをお前の歪みに巻き込むつもりなら、俺も容赦せん」
血の色をした爪が鈍くしかし鋭く光る。
「なるほど、慈悲深く宣戦布告にきたというわけか」
アイオロスの声音がかわる。
「宣戦布告ととるのか?」
「ああ…降伏などはしないさ。アレはオレの玩具だ」
ミロの背にサジタリアスの弓があてがわれる。
「お前が隙をつけばオレを殺せると、それを示す為に口付けたのだろう?」
矢は聖衣の隙間を静かに押し開きミロの身体に直接触れている。
「さて?話を続けようか」
ミロの爪を逸らし鼻先に口付けるとアイオロスが笑う。
まな板の上はお前の方だと。
「フッ…俺を消したところでサガを自由には出来んさ」
「何?」
その時殺気に満ちたカノンの小宇宙が霧のように緩やかにアイオロスを取り囲む。
「思った通り、尻尾を出したな…アイオロス」
声の主を見て口笛を吹く。
「やはり兄弟だなカノン…お前も負けずと美しく歪むのか」
込み上げる笑いを喉に押し込めながら立ち上がると、ミロ
の横を抜けカノンに歩み寄った。
距離が一歩、また一歩と縮まる。
カノンが殴りかかったその時、教皇の間に芳しい薔薇が舞い降りた。
咄嗟に飛び退いたカノンの足元…床に何本かの薔薇が刺さっている。
「下がりなさい、カノン。」
ミロのそれとは違う緩やかに波打つ髪をなびかせて、アフロディーテが静かに教皇アイオロスの隣にたたずんだ。
「ミロ…貴方もです。教皇を前に何をしているのですか…控えなさい」
ミロが両手を挙げると背中から矢は抜け落ちた。
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