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□君恋し
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次はカノンの試合だった。
聖戦が終わり地上に残った余波を打ち消すのが専らの任務であったが、黄金が出向くほどのものも少なく、殆どが白銀の派遣で事足りていた。
そんな聖域において、青銅や聖闘士となる為に訓練を受ける者たちの気を引き締めるべく、試合は行われる事になった。
今回闘うのはカノン、デスマスク、アイオリア、ミロ、アイオロス、シュラの六人。
組み合わせは教皇補佐のサガが玉をひいて決めた。
初戦はシュラとデスマスク次いでカノンとアイオリア。最後がミロとアイオロス。
勝ち抜きではなく、勝敗はサガか本人が敗けを認めるまでという至極簡単なもの。
技は使わず体術のみを使うという約束でそれは行われていた。

軽やかに素早く足技をかけるシュラをデスマスクは常にギリギリでかわしていた。
手刀そのものが最大の武器となるシュラは、基本脚しか使わない。
その様子をミロはアイオロスと話ながら眺めている。
人前に引きずり出された上に相手はミロではない。大体はじめはシュラ、ミロ、アイオリアしか出場者がいないからと頼まれたのだ。折角の機会だから3試合くらいは見せたいとサガに頼まれ、まぁ初回外れても勝てば必ずミロと闘えるだろうと気楽に引き受
けたのだ。
ところが蓋をあければ教皇が気分よく出場し、デスマスクが引きずり出されて勝ち抜き戦ではなくなっていた。
考えればわかることだった。
アイオロスが出たがることも、サガに逆らわないデスマスクが試合に出ることも。
そして二人きりでない限りミロとは闘わせてもらえないであろうことも…

今ミロは俺ではなくアイオロスと楽しげに話している。
胸がチリチリと痛むのをカノンが感じた時
カノン!次はお前の番であろう。
小宇宙に直接サガの声が響いた。
見れば勝敗が決まったようだ…
だが闘技場からは試合後の盛り上がりが感じられない。
あるのは水をさされたような静けさ…後に沸き上がるざわめき。
サガ…何が起きたのだ?
カノンが聞き返す。
何も起きてはいない。時間切れだ。
冷たくサガがいい放つ。
要するにデスマスクの判定負けらしい。

お前のそうやって適当に過ごすところが気にくわん!たまには真面目に…

シュラがデスマスクに文句を言っているようだ。
追っていたシュラと違い、逃げ回っていたデスマスクが息を乱していないのが一層シュラを苛立たせる原因となっているのは言うまでもない。
友を受け流し、飄々と戻ってきたデスマスクはカノンの
横で一瞬動きを止め口のはしで笑う。
愛しい人ばっかり見てると獅子に喉笛噛まれちゃうぜ?
言うだけ言って黄金の列に戻っていった。
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