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□ミロ三本〜双子誕〈ミロとカノン〉
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今日の主役はサガとカノンの二人。
乾杯のあと、一通り飲み食いをしたカノンは早々に引き上げていった。
ぶつかるようにデスマスクがカノンに渡した菓子箱のような物に気付いたのは数名しかいないだろう。
「ミロ…行ってやれ」
適温に冷やしたスパークリングワインのボトルを、カミュはミロに手渡した。
悪いが抜けるとミロが言おうとしたタイミングで渡されたそれに、ミロは笑みを返した。
「ああ…有難うなカミュ」
借りになるのだろうか。来月はデスマスクの誕生日だ。
しかしながら、何故かカミュが想いを寄せる蟹座の聖闘士を欲する者は多い。シュラと黒髪のサガは知れ渡っているが、実はアフロディーテもそうだと言うのだから不思議でならない。
当日に二人きりなど、あり得ないだろう。
考えすぎかと苦笑しながらミロはカノンの後を追った。
同じ頃、デスマスクが席を外したのをカミュは見ていた。普段騒ぐのは好きなくせに、誕生日など特別な祝いごとになるといつも途中で抜けていく。しかし、律儀にお開きになる前には戻ってくるのだ。
飲みかけのグラスを置くとカミュも静かに席を立った。
「デスマスク…」
双児宮から死角になる岩影にその姿が見えた。
「んだよ」
いたず
らを見つかった少年のような顔がカミュを見てくる。
「いつもお前は抜け出すのだな」
「良いだろ?俺のためのパーティーじゃないんだし…」
「フッ…お前のためであろうが抜けるだろう?」
頬に触れる長い爪に視線を落とす。
「まぁな」
伏せられたデスマスクの瞳は青とも銀とも灰色ともとれる。
しかし、真っ直ぐに見つめればうちに流れる命の色が際立って赤く見えるから不思議である。
どこかぎこちなく笑う唇に近付く唇。かかる息。
割って入った舌は、冷水のように気持ちよかった。
「来月の誕生日…きっとお前は忙しいのだろう?」
だから…とカミュが小さく笑う。
「目立つ傷はつけんな、一時間後には中に戻る」
それが出来るなら構わないとデスマスクは巨蟹宮に向かって歩いた。
「一時間以内か…」
足りない分は後日請求させてもらおう。と、カミュはその後に続いた。
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