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□ミロ三本〜双子誕〈ミロとサガ〉
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最後まで責任を持ってパーティーを終えたサガは聖衣を脱ぎ、ひと風呂浴びた。祝福をないがしろに逃げ出した愚弟とそれを追ったミロ。二人の睦事も、もはや済んでいるだろう。
私服に着替えたサガは宮をのぼって行った。気付くものも気付かぬものもいるなかを天蠍宮を目指す。

目的の宮の前でサガは立ち止まったり。自分はカノンのように合鍵を有してはいない。二人が盛り上がっていれば、気付いては貰えないのではないだろうか…と。
しかし、そんな不安を他所に、あっさりと宮の主人はサガの前に姿を現した。
「どこかで視ていたのか?今事後処理を終えたところだぞ」
「弟の誕生日にそんな野暮はしない…」
「お前の誕生日でもあるだろう」
ミロが苦笑する。
「まぁ入れ」
そう促したミロは雄臭さとカノンの香りに満ちている。
ちりっと胸が痛んだ。
ソファで完全に落ちているカノンを見たとき、また胸が痛みを訴えてきた。
カノンが香るミロに、兄を置いてミロと寝ていた弟に…胸が痛むのは何故だろう。
ふと机を見ればネコの絵本とクッキー。双児宮に置いてきたデスマスからのプレゼントは開けていないが、サイズからして自分のところにはクッキーくらいしか入ってはいないのだろう
。もっとも、デスマスクが恋慕うもう一人のサガには別の物を用意しているのかも知れないが…
時折ひどく前向きに、我が道を行くサガは、しかし非常に陰鬱になることもしばしばだ。
「座らないのか?と言いたいがカノンがいたのだったな…」
呟いたミロの視界の隅に闇を注しはじめたサガの白金が映る。
「おい…サ…」
名を呼びかけたミロだが、それを断念する。目の前の男は既にサガであってサガではないからだ。
「ククク…フフ…フハハハハハ。よもや誕生日に酔っ払いが闇落ちするとはなぁ!愉快だな」
艶やかに波打つ黒髪。血も凍るような紅き瞳。
「…あんたはデスマスクのとこに行っとけよ…」
「何故蟹のところに行かねばならん?」
つんと即答する男にミロはあまのじゃくだな…とため息をつく。
カノンが起きていればミロに絡んでくることなどないが、カノンが不在中やサガが落ちている時はよく絡んでくる。しかも9割りがデスマスクの話だ。
『そんなに好きなら他の奴に抱かせておかなければ良いだろ』
蘇った後にそんなことを言った覚えがある。
『この体で奴を抱けと?』
そう返した男に首を絞められていた。本気で絞めてはいたが殺意はなかった。だからミロも黙って絞められ
ていた。
目の前の男は、確かにデスマスクを愛している。しかし、それ以上に弟とサガを愛しているのだとその時知らされた。
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