REBORN! 短編小説集

□大空を想う
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10代目、俺はどうすれば良いのですか?
10代目、もう俺の名前を呼んで下さることはないのですか?
もう、俺に笑いかけてはくれないのですか?
もう、そばに居ることは出来ないのですか?

――もっと、ずっと、貴方のそばに居たかった。
これからも、沢山貴方と思い出を作ることができると思っていた。

10代目、それでも俺は貴方を諦めることができません。
大空が堕ちたあの日からも
ずっと、あなたの事ばかりを考えています。

月を見上げ、貴方の事を思い出していました。
悲しい程に、綺麗な月でした。
昇る朝日は、そんな幻想を振り払って
残酷な現実を突きつけてきます。

それでも、そこにはいつでも変わらずに
大空が全てを包み込むように広がり続けていました。
大空を失った今、俺達はどうすれば良いのでしょうか。
大空が無ければ、俺達は存在することは出来ないのに。

貴方が夢に出てくる度、俺は貴方に手を伸ばします。
けれども、貴方に触れようとした途端に
そこに居なかったかの如く貴方は消え去ってしまいます。

貴方のことを思い出すだけで、胸が痛みます。
首を絞められたかのように、とても息苦しくて。

何故、俺は10代目を守れなかったんだろう。
それを自らに問いかける度に、頭が割れそうなほどに痛くなる。
貴方に出会った日からの誓いも、夢も
何もかもが夢幻の様に儚く散っていきます。

あの日に戻れたら良いのに。
何度そう思ったことでしょうか。
運命の分かれ目となったあの日、
俺は貴方を守り抜くことは出来た筈。
あの日に戻って、全てをやり直したい。

少し立ち止まり、振り返ってみても
あの日は何も変わらないまま、
虚しい答えを出し続けるだけだった。

俺が俺であるまま、夢を叶える事はできたのでしょうか。
俺が俺であるまま、どこまであなたを想い続けることができるのでしょうか。

10代目、この声が届いていますか。
10代目、俺の姿が見えますか。

「じゅ、だいめ……まだ、まだ消えないで下さい……っ」

溢れそうになる涙を必死にこらえ、
喉から声を絞り出して。
とても小さな掠れ声は一人静かな部屋に響いて、
俺の心に痛いほど染みた。

想いも、願いも、全て大空に溶けて消えていく。
このままずっと一方通行なのかと思えば胸は苦しくなる。
けれども、この想いが大空に伝わっていったのなら
少しは空虚感も和らいだ気がした。


fin

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