「さっわむらー…何してんの?」

夕食後、昨日の練習試合の反省会を行うため5号室を訪れると、目に入ってきたのは床に寝転び顔を付き合わせて何か作業をしている倉持と沢村。

「ノックしろっつってんだろメガネーしばき回すぞー」
「あ、御幸センパイいいとこに!ちょっとこっち来てくだせぇ!」

倉持に平謝りし、沢村に促されるまま2人のもとへ向かう。つーかお前ら顔近いな。

「これ手伝ってくだせぇ!」
「……パズル?」
「そうっす!…っあーー首いてぇ!」

そこにあったのは、既に4分の1ほど完成している綺麗な海の絵を模したパズル。おそらく1000ピースなのだろう、見た感じかなりの大きさになっている。

「おい、御幸。暇ならイルカ作れ。箱の絵見ればわかんだろ」
「イルカ?…あー、これか」

常に首や肩を動かし体勢をかえている沢村とは対照的に、全く動かずパズルを組み立てる倉持。こいつって意外と凝り性っていうかなんていうか…そう思いながら箱を手に取る。

「つーかお前ら、なんでこんなのやってんの?すげぇ時間かかるじゃん」
「俺だってやりたくてやってんじゃねーよ。そこのバカがクラスの女子から貰ったんだと」
「バカとはなんです、バカとは!!」
「いいから早く作業始めろバカ。いつまで休憩してんだ」
「……もっち先輩のパズルバカ」
「あ?」
「作業しやす!!!」

半ば涙目になりながら組み立て始めた沢村をみると、おそらく休憩するたびこのやりとりをしていたのだろう。

俺も怒られないうちにイルカ作ろ、そう思いピースを組み立てる…が、これが中々難しい。パズル自体久しぶりということもあり、全く集中力が続かない。



どれくらい時間がたったのだろう、

もうやだ、やめる!
ふざけんな、最後までやってけ!
もっち先輩俺休憩入りやす!
うるせぇ、続けろ!
そーいや俺反省会しに来た…
これ完成したら好きなだけ反省しろ!
もっち先輩俺休憩入りやす!
だっから続けろっつってんだろバカ村ァ!!!

そんなやり取りをもう何回繰り返したか、完成した頃にはもうすっかり深夜になっていた。

「やっとできたな…」
「よっしゃ、あとはピースの糊付けだ…おいバカ、箱から糊出せ」
「のり、のり…これっすかァああああ!!!!?!?」






………あぁ、やらかした。
沢村がやらかした。
いや、そこに反省会用のノート置きっ放しにしてた俺も悪い。悪いけどな。それを踏んで滑って転んでその上パズルの上に尻餅つくか、お前は。見てみろ、倉持サンの顔を。

「………さぁああああわぁあああむぅうううらぁああああああ!!!!!!!」
「すいやせん!!すいやせんもっち先輩!!!!俺だって悲しいっすーー!!!!!」
「うるせぇバカ村!!!今すぐそこに直れェ!!!!!!」


深夜にも関わらず大声で叫ぶ沢村と倉持。あぁ、眠い。もう止める気にもならない。

薄れゆく意識の中、もう二度とパズルなんかやらない。
そう心に誓った、御幸一也17歳の秋だった。


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