太刀川隊の剣姫

□太刀川隊の剣姫
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この二人には返しても返しきれない恩を感じていた。
迅には、生活の場と戦闘の稽古を付けてもらい、A級上位という太刀川に2勝出来るまでに成長させてもらった。
太刀川には、戦うための力を手に入れるキッカケを与えてもらった。もしあの時、太刀川にスカウトされなかったら今も立ち直れずにいるか、自責の念に耐え切れずあの場で自ら命を絶っていた可能性もある。
今、こうしてここにいられるのはこの二人のおかげであることは間違いようのない事実であり、だからこそ雪華はどちらかを選ぶなど出来ず、かなり困っていた。
太刀川隊でやっていくか、それともこのまま玉狛支部でやっていくか。
雪華が決めあぐねていると、迅が何かを思い出したかのように…いや、実際になにか思い出したようだ。
「あのさ太刀川さん」
「なんだよ?」
「忍田さんには許可取ったの?」
「………それはこれからだ」
「じゃあ許可はまだ取ってないんだ?ダメじゃん」
「うるせぇよ。…で、雪華はどうするんだ?」
「私は……



太刀川さんの隊でやってみたいです」

雪華がそう口にすれば、太刀川は嬉しそうに口元を綻ばせ、迅は仕方ないと潔く諦めたような顔になった。
「迅さんごめんなさい…。迅さんや桐絵先輩、レイジさんにも、いっぱいお世話になっておきながら…」
「……いや、いいよ。雪華がやりたいと思うことを尊重しようって思ってたし。まぁ、確かに雪華がいなくなると寂しくはあるけどな」
「迅さん……」
迅の言葉に、雪華は目頭が熱を持つのを感じた。
「ははっ!泣くなよ雪華」
「だ、だって……!」
「きっと忍田さんは了承してくれると思うし、これからがんばれよ?剣姫」
「?迅、ツルギヒメってなんだよ?」
「ん?雪華の二つ名というか異名?」
「なんでツルギヒメなんですか?」
「だって、おれが今まで稽古付けてたとはいえまさか太刀川さんから2本とった上に、あそこまで追い詰めてたから。剣捌きもなかなかだったし、雪華がやろうとしてるあの技…多分二刀流ならいけると思うぞ」
「二刀流……」
「成程。そういえば、確かに孤月を2本使えば出来なくはなさそうだったな」
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