太刀川隊の剣姫

□太刀川隊の剣姫
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「嵐山隊…何故玉狛と手を組んだ?玉狛は近界民を使って何を企んでいる?」
「玉狛の狙いは正直よく知らないな。迅に聞いてくれ」
「なんだと……!?」
「近界民をボーダーに入れるなんて普通はありえない。よっぽどの理由があるんだろう。迅は意味のないことはしない男だ」
確かに、あの人は無意味なことはしない。しかし、その近界民をボーダーに入隊させたことによりこちら側の情報が漏洩する可能性も無きにしも非ずではないだろうか。
「そんな曖昧な理由で近界民を庇うのか!?近界民の排除がボーダーの責務だぞ!!」
声を荒らげる三輪に、嵐山は宥めるように言う。
「おまえが近界民を憎む理由は知ってる。恨みを捨てろとか言う気はない。…ただ、おまえとは"違うやりかた"で戦う人間もいるってことだ」
そんな嵐山の考えを聞いても、不安を拭えず揺れる瞳で雪華は訴えた。
「…それでも、私は近界民をボーダーに入隊させるという事には賛同しかねます。その近界民を信用できるとも限らない」
雪華の訴えもまたもっともであった。
近界民が信用に足る存在だとは、多くの人がそう認識できないだろう。
「…雪華や三輪の言うことはもっともだろうが、今は無理にでも納得して帰ってもらわにゃならん。納得出来ないなら、迅に代わっておれたちが気が済むまで相手になるぞ」
何を言っても無駄。雪華達は嵐山の言葉にそう感じた。
「戦るならさっさと始めようぜ。早くこっちを片付けて太刀川さんに加勢しなきゃなんないからな」
そう言う出水の手元には、大きなトリオンキューブが浮かんでいた。戦闘態勢に入ったらしい。
その時、近くのマンションから出水が狙撃されるが、出水は読んでいたらしく両防御で弾を防ぎ、嵐山隊の狙撃手・佐鳥の位置を割り出した。
すぐさま米屋が向かうが、木虎もまた佐鳥のカバーに入るべく瞬時に動いた。
「……雪華。お前の気持ちも分からなくもない。だがな、今は目前の戦いに集中しろ。お前は…―――太刀川隊の剣姫だろ」
出水の言葉に、雪華はハッとしたように軽く目を見開くと、真っ直ぐ前を向いた。
「そう、ですね…。私は太刀川隊。隊長が戦ってるのに、私が迷う必要なんてなかったですね」
前を向いた雪華のその目には、もう迷いなど吹っ切れた好戦的な意志が宿っていた。
「さぁ、始めましょうか。太刀川さんが負けるとは思わないけど、はやく加勢したいし」
そして長い夜の戦いが始まった。

‡To Be Continued‡
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