この空の下で

□非日常の始まり
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「夕空ちゃん、聞いて下さい!
私、気になる人が出来ちゃいました!」


中間テストや実力テストが終わって数日。
今日は久しぶりに部活も塾もない日。
私は友達の三浦ハルちゃんに誘われて一緒にケーキと紅茶が美味しいと評判の良い【ラ・ナミモリーヌ】で談笑していた。

すると、ハルちゃんが目を輝かせながらそう言った。気になる人が出来て告白ももう済ませている、という。

て、展開が…は、早い!

驚く私を無視して彼女はその気になる人とやらのことを話していく。


「とってもキュートでチャーミングなエンジェルちゃんなんです!」

「え、エンジェル?」

「そうなんです!エンジェルなんです!なのに、そのエンジェルちゃんにデンジャラスなことを唆しているとてもデビルな方が居まして」

「デンジャラス?デビル?」

「はひ!なので、ハルはエンジェルちゃんを救うためにそのデンジャラスな人に説教と平手打ちしてやったんです!」

デンジャラスでデビル…
悪影響を与える悪魔みたいな人…
不良ってことかな?

そんな人を説教して平手打ちするなんて、ハルちゃんかなり危険すぎやしないかい。


「ですが、その方は反省していないみたいなのでまた明日アクションを起こします!」

目に闘志の火を燃やすハルちゃんに、
私は流石に何も言えずにティーカップを口元へ持っていき、中身のストレートティーを飲む。

触らぬ神に祟りなし、だ。うん。



「ただいま」
「おかへり」

ハルちゃんと商店街で別れて自宅に帰ると、丁度綱吉君がリビングでアイスを咥えながら落ちゲーをしていた。

行儀悪いなと思いつつ、彼の後姿を見て、ふと違和感を感じて声を零す。


「綱吉君、頬のそれ…」
「え?あ、いや、これは…」

左頬に大きな湿布が貼られていた。
私の言葉に咥えていたアイスを慌てて落としそうになる綱吉君。

妙な緊張感が走り、
その場に沈黙が訪れる。

まさか、
ハルちゃんが言ってたエンジェルって…


「ちゃおっス!」

「リボーン君」
「リ、リボーン」

「夕空、帰ってきて悪いが、コーヒー豆のお使いを頼まれてくれねーか?ツナだと、違うのを買ってくるからな」

「え、コーヒー豆ってもうなかったけ?」

「赤ん坊がコーヒーとか飲まないだろ…」

「ふっ、オレは普通の赤ん坊じゃねえからな。んで、夕空いいか?」

「えと。着替えてからでもいいかな?」

「おう、大丈夫だぞ。これがリストだ」

リボーン君はそう言って、コーヒー豆のリストとお金を私に渡してくれた。
(ビアンキさんかお母さんに頼まれたのかな…)


制服から私服に着替えて、
橙色から藍色へと染まり始める景色の中で、独り買い物を済ませて商店街から自宅への道のりを急ぐ。


「……!?」

閑散とした住宅街に私の足音とは違うコツっと革靴の音が静かに響いた。

慌てて振り返るもそこには誰もいない。


「……っ」

このまま様子を見る?
戻って確かめる?
民家に逃げ込む?

「…。」

いや、待て。
ハルちゃんのような美少女じゃなくて、こんな平凡な女子をストーカーとか、あるわけないないよな…

サスペンスの観すぎ…


「あ、あの…貴女は幼い沢田夕空さんですよね?」

「!?」

じゃなかった!!お、幼いって…!?
なんか、どこかで聞いたことあるフレーズ…


「もうすぐ日が暮れて夜になる。早く帰られたほうがいいですよ」

「というか、あなた、誰ですか?」


この人どこから沸いて出てきた?

変質者?不審者?

どうして私の名前を知っているの?


「違います!無実です!」


私の心を読むように男性は否定した。
そして、告げる。

「あ、貴女の名前を知っているのは、お…俺が10年後の世界から来た貴女の恋人だからです!」

「は?」

この人、何を言っているの?
10年後の世界から来た?
もうこれは頭おかしいとかじゃなくて…


「あ、10年後って…あの牛柄シャツの子と?」

「はい。10年後のアホ牛が騒がしくていつもお世話になってます。」


俺は10年後の獄寺隼人です。
と、嬉しそうに銀髪と翠色の瞳が似合う美形のお兄さんは私に名乗る。しかし、


「待って。あの、…ごくでらはやとさんって誰ですか?」
「えっ?」


現在の私は目の前にいる10年後の彼も現在の彼ともまだ面識はなかった。



To be continued

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