この空の下で
□キティとの戯れ
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「にょーん」
「か、可愛い」
近頃、私の家に遊びにくるランボくんとイーピンちゃんのお菓子と夏休みの補習に追われている綱吉くん、山本くん、そして先日初めてお会いしたこの時代の獄寺くんの差し入れも買おうと考えて買い物を済ませた商店街の帰り道に可愛い仔猫に出会いました。
その仔はルビーのような真っ赤な目に耳には赤い炎がうっすらと見えるので普通のにゃんこちゃんと違うのが一目瞭然だ。だけど、可愛い。
月刊世界の謎と不思議!
UMA!?
「にょん」
あ、毛繕いをやめた仔猫と目が合った。触りたい。遊び倒したい。とにかく構いたい。
「にょ!」
結果、どこからともなく猫じゃらしを取り出して振ってみたらその仔は好奇心旺盛なのか。猫じゃらしに興味を示して近づいてくる。狙いを定めて飛びつく仔猫に負けじと素早く猫じゃらしを動かして隠たり、またゆるゆる動かしてもみたりとまさに接戦である。
「にょ〜ん」
猫じゃらしを捕まえられて嬉しそうに鳴いた後、仔猫はまるで甘えるように私の膝元に擦り寄ってくる。どうやら、私はこの仔にオヤツをねだられるぐらいに好かれたようだ。
「小魚食べる?」
「にょ!」
頷くように首を縦に振る仔猫。
この仔もしかして飼い猫なのかも。
「それ食べ終わったら飼い主さんのところに帰ろうね。きっと心配してると思うよ」
「にょん」
小魚を食べ終わって仔猫は何処かへと歩き出す。私はその後ろ姿を見守っていた。が、仔猫が振り返って鳴き出す。 オヤツをくれたお礼を言っているのだろうか。と、勝手に解釈していた。が、どうやら違うらしい。
「にょーんっ!」
仔猫がこちらまで駆け寄ってきて、
今度は勢いよく私に飛びついた。
ふ、不意打ちである。
「にょん」
「こら、瓜。勝手にどこかに行くんじゃ」
「この仔、獄寺さんの猫なんですか?」
「って、夕空さん!?」
何故ここに!?と驚く獄寺さんに私は乾いた笑いを零す。ウリと呼ばれた仔猫ちゃんの手の爪が胸もとに引っかかってしまい取ろうにも取れない状態であると伝えた。獄寺さんは「な、なんて羨ましい」と小さく呟いた。
「えっ?」
「い、いや、それは大変失礼なことを今外しますので」
む、胸もと失礼しますね。と獄寺さんは慣れているのか早々に私から瓜ちゃんを引き離した。
瓜ちゃんは名残惜しいのか獄寺さんに唸っているが「これ以上、夕空さんにご迷惑をかけるんじゃねえよ、ほら。メシだ」と今流行りの餌を与えた。瓜ちゃんはそちらに目移りしたのか餌に向かう。
「瓜を連れてきてくださってありがとうございます。こいつまた勝手にどこか行きやがって」
「猫ですからね。………ところで獄寺さんはこの暑い中、スーツ姿で暑く無いんですか?」
今日もきちりとした黒いスーツ。
見ているほうが暑い、と指摘するとバツが悪そうにこれしか着る服が無いんですと返してきた。
「まだ10年後の世界に帰れないんですか?」
「はい。そうなんです。」
「10年後のランボくんとイーピンちゃんは何度もこちらとあちらを行ったり来たりしていますが…」
どうして獄寺さんだけは10年後の世界に帰れないんだろう?と疑問に思う。
「確か獄寺さんは10年後の私と恋人なんですよね」
「はい。そうです。」
「答えられなかったら答えなくていいんですけど。未来の私はどうなっていますか?」
「未来のあなたはとても人当たりが良く美しいので群がる男どもを果たすくらいに俺は毎日嫉妬しています。」
「(果たす?)…そうなんですか。なら、尚更10年後の世界に帰りたいですよね」
「はい。ですが、今はこの世界に貴女がいるので寂しくなんてないですよ。」
穏やか笑って言う獄寺さんに私は微笑み返した。そして、願った。早く獄寺さんが10年後の世界に帰れますように、と。
だけれど、この時、私は気付かなかった。穏やかに微笑む獄寺さんが10年後の世界に帰れない理由が私たちに関係していることなんて。
To be continued