この空の下で

□暴かれるヒミツ
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「お待たせしました。こちらホットコーヒーとホットミルクティーになります。」

では、ごゆっくり。と店員はカウンターへと戻っていく。現在、この場にいるのは私と10年後の獄寺さんの2人だけ。私は早々に温かいホットミルクティーの入ったティーカップで暖を取る。


「過去の俺達が暴れて、幼い夕空さんに危害が及ぶようなことをしてしまい本当に申し訳ありませんでした。」

「いや、もう大丈夫ですから。」

「ですが、もし俺が駆けつけていなかったら貴女の身は、今頃、奴等に」

「獄寺さんが駆け付けてくれて助かりました。ありがとうございます。」


「夕空さん」

「何ですか?」

「過去の、いや現在の俺のことどう思っていますか?好きになってしまいましたか?」

「出会ってまだ日が浅いのでよくわからないです。」

「ですが、貴女が助けを求めたのは、現在の俺でしたよね?」

少なくとも現在の俺を異性として意識しているのではないですかと獄寺さんが哀しそうな顔をして、ホットコーヒーに砂糖やミルクも入れずに飲んだ。

私は思わず口を開いた。


「獄寺さん、貴方は、本当は10年後の世界に帰れないじゃなくて帰ろうとしないのではないですか?」

「っ…」

「貴方は10年バズーカではなく、別の方法で未来から過去に何らかの目的でこの時代へやってきた。」

『この世界には貴女がいるので寂しくなんてありません。』

「10年後の私は、本当の私はどうなってーー」


いるのですか?と尋ねようとした時、向かいに座っていた獄寺さんが頭を押さえ踞る。


「ご、獄寺さん…?」

「申し訳ありません。夕空さん、その質問には答えられません。あと、現在の俺がこちらに向かっています。俺は現在の俺と顔を合わせていけない。」



同じ瞬間に同じ場所に同一人物が存在してはならないという掟があるんです。


「さあ早く外に出てください。そして出来るだけ現在の俺を遠ざけてください。よろしくお願いします。」

苦しげに頭を押さえて言う獄寺さんに私は慌ててお会計をして外に出た。すると、獄寺さんの言った通りこの時代の獄寺くんがこちらに向かって走ってくる。


「獄寺くん、こんばんは」

「こんばんは、夕空さ…じゃないですよ!?10代目とお母様が塾から帰ってこないと心配していましたよ!」

「ご、ごめんなさい。塾の友達と前回の実力テストの復習しようってことになってカフェでお茶してたの」

「そーなんすか?」
「うん。もう帰っちゃったけど」
「それって男っすか?」
「そ、そうなの。入江君って言って頭がいいんだ」

なんだろう。
この昼ドラみたいな感じ。
まるで、浮気疑惑をかけられた夫が必死に妻を説得してるみたいな?
と言うか、なんで私は焦ってるの?
獄寺くんとはそんな関係じゃ…。


「へー、まあいいです。さあ、帰りましょう。お家まで送っていきます」

獄寺くんは私の嘘と真実を織り交ぜた事情を聞いてイマイチ納得していないのか。不服そうな顔をしたが、直ぐにパッと笑顔を作る。


「さあ、行きましょうか。夕空さん。」

がしっと獄寺くんに手を取られて、彼が走ってきた道を今度は2人で歩いていく。うわっ、ナチュラルに獄寺くんと手を繋いでる。な、なんか照れくさい。ドキドキしてる。手汗とか大丈夫かな。顔、赤くなってないかな。

『現代の俺のことを異性として意識しているのではないのですか。』

私はやっぱり獄寺くんのことを、
好きなのかな?いつから、恋に落ちていた?

あれ?そういえば……。


「あ、あのさ、獄寺くん」

「なんすか?」

「どうして私が商店街にいるってわかったの?」

「あー、それはアホ女いやハルに会いまして教えてもらいました」

「(ハルちゃんを呼び捨て…)…そ、そうなんだ」

ずきん、と胸が痛んだ。
呼び捨てにされるハルちゃんが羨ましいと思った。

現在、私の頭の中では矢印が渦巻いている。獄寺さん→私→獄寺くん→ハルちゃん→綱吉君→京子ちゃん。なんだこれ。六角関係なんて凄く複雑じゃないか。

ぼんやりとそんなことを思っていると、獄寺くんがため息を吐いた。


「まったく、本当に心配したんですよ。今朝は黒い車で連れ攫われたと思ったら、跳ね馬野郎の仕業で。だけど、いくら学校が終わって10代目の家にお邪魔して随分経つのに塾から帰られないから」

「…。」

「何処かで何か事件に巻き込まれたんじゃないかと思いました。夕空さんはその無防備ですから」

「そんな私なんて」

実際に事件に巻き込まれていたとは言えないな。獄寺さんがスピード解決してくれたので問題ないはず。


「夕空さんって自分に関心がないんですか?」

「え?」

「烏滸がましいですが、私なんてって、言わないでください。俺から見て貴女は10代目と同じくらい大切な人なんです。」

だから貴女は自分を大事にしてください。そう言う獄寺くんに私は思わずにはいられなかった。それってブーメランじゃないか、と。


To be continued

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