この空の下で
□入院先の出来事
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「夕空ちゃん、大変よ!ツー君が!」
綱吉君が入院した。ハイキング先で怪我をして並盛中央病院に運ばれたという。そのことを聞きつけた母さんが私に綱吉君の替えの下着などを持たせてくれた。
そうだ。病院で暇している綱吉君のためにiPodを持ち、それから今日発売される漫画雑誌も商店街で購入していこう。そう決めて私は公園の前を通った。
その時、聞き慣れた声がした。
この声は獄寺くんとハルちゃん?
公園を覗くと、そこには獄寺くんとハルちゃんが同じベンチに座って何かを言い合っているのがわかった。邪魔しちゃ悪いと思って私は早々にその場を去った。本当に仲が良いんだから。
少しだけ胸が痛んだのを無視して。
「よう、夕空じゃねーか。ツナの見舞いか?」
「こんにちは、ディーノさん!そうなんです。ディーノさんもですか?」
病院に入ると、ディーノさんとその連れの人たちがいた。ディーノさんは「ああ、俺はもう見舞い済ませてきたぜ。」と答えた。
「ツナの病室に案内しようか?」
「いいんですか?」
「おう、いいぜ。」
ついてきな、とディーノさんが踵を返して歩いていく。その後ろに私はついていった。
「あれ?おかしいな、ツナがいねぇ」
「えっ?何かの検査でも受けてるんでしょうか?」
ディーノさんが案内してくれた病室には綱吉君の姿が見当たらない。何かの検査を受けているのかと思い悩む。そこへ、主任さんが声を掛けてきた。
「『沢田さん』のお見舞いの方ですか?」
「あ、はい。そうです。」
「『沢田さん』なら大部屋ではなく個室に移ってもらいました」
「え?個室にですか?」
「悪いな、多分俺らが騒がしくしたせいかもしれねぇ」
「まあ、そんなことありませんわ。ただ大部屋の方々たっての希望だったもので。」
案内しますわ、と機嫌よく歩いていく主任さんの後を私とディーノさんは顔を見合わせてからついていく。その後ろにはディーノさんの連れの方がついてくる。
「ここですわ。『沢田さん』、入りますよ」
は、はいと個室から綱吉君の焦ったような声が聞こえた。主任さんは何の躊躇いもなく個室のドアを開けた。
「お見舞いの方が見えてます。」
「さっき振りだな、ツナ!夕空を連れてきたぜ…ってなんだ獄寺も一緒か」
「え?獄寺くん?」
ディーノさんの後ろからひょこっと顔を出して個室の中を覗く。個室の中には綱吉君と身体中に包帯を巻かれた獄寺くんが居た。怪我を見ると綱吉君よりも重体そうに見えるが、ハルちゃんと別れた後に何があったと言うの。
「ディーノさん、それに夕空」
「跳ね馬、てめぇな。俺は現在10代目と大事なお話をしてるんだ。邪魔すんな。そして夕空さんを置いて帰りやがれ………がはっ」
「ご、獄寺くん、落ち着いて。あ、主任さん。あ、あの俺をまた別の部屋に移動することって出来ませんか?」
「(吐血…)私からもお願いします。」
このままでは獄寺君の傷に障ると思い、私も綱吉君と同じく頭を下げる。
「わかりました。では、別の部屋に移動しましょう。お連れの方も一緒に」
主任さんもそう思ったのかあっさりと部屋の移動を許可してくれた。側にあった車椅子に綱吉君が座り、私が車椅子を押して「こちらです。」と案内されながら私達は個室から抜け出した。
後ろから綱吉君や私の名前を名残惜しく呼ぶ獄寺君の声が追いかけてくるが無視である。そして、ここでディーノさんとも別れた。
「綱吉君、これ替えの下着が入ってるから。あと、入院中だと暇だろうと思ってiPodも持ってきた」
あとこれ今日発売の漫画雑誌ね。と、綱吉君に渡すと「普通のお見舞いだ!ありがとうっ!」と何故か泣いて喜んでくれた。
私がここに来るまで病院で何が起きていたのか気になったが、詮索しないことにした。
To be continued