この空の下で
□失恋した片割れ
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「……あのさ、夕空」
「どうしたの?綱吉君」
「どこかで何か食べるもの買ってきてくれないか?」
お昼ご飯食べ損ねちゃってさ、と苦笑する綱吉君に私は分かったと頷いて椅子から立ち上がった。
「それじゃ、病院の売店で見繕って来るから」と、綱吉君の病室を出て、売店のある場所へ向かう。
あ、そうだ。
獄寺くんにも何かお見舞いになるものでも買って行こう。
「……居ない」
売店の帰り道、私は獄寺くんの病室に立ち寄って中を覗くと先程までベッドで横になっていた獄寺くんの姿はなかった。お手洗いにでも行っているのかと思い、お見舞いの品だけ置いて綱吉君の病室に向かった。
向かう途中、どこかでパァンと花火みたいな音や地震のような振動が廊下に走った。が、無事に綱吉君のいる病室に辿り着いた。
「綱吉君、買ってきたよ。」
「ありがとう。さっき病室内がすごい揺れたんだけど、外で何かあったのか?」
「ううん、何もなかったよ。」
地震じゃない?と、私がそう言うと綱吉君は「そっか」と先程渡したレジ袋の中を漁りおにぎりを取り出して、パッケージを剥がす。
「じゃあ、私はそろそろ帰ろうかな。」
「あ、うん。今日はありがとな。」
綱吉君が無事にレジ袋の中に入っているおにぎりを食べ終わるのを見計らって私は帰り支度をする。すると、綱吉君が思い出したように言った。
「そうだ。ランボがまだ病院内に残っていたら連れ帰ってくれないか?」
「ランボくん?うん、わかった。見つけたらそうするね。」
またね。と綱吉君の病室を出た私は階段を使って1階に降りる。その途中、パジャマ姿の雲雀さんに出会った。
「あ、こんにちは。雲雀さん」
「やあ、君か。彼のお見舞いかい?」
「はい。その帰りです。雲雀さんはどこか悪いんですか?」
「僕はただの風邪だよ。」
「そうなんですか。」
「ふっ、君はいいね。静かで群れていないから。」
じゃあね。と雲雀さんは階段を上っていく。私はそんな雲雀さんに「お大事に」と声をかけて階段を下った。
1階に辿り着くとフロアがまるで爆発でもしたのか瓦礫まみれになっていた。どうやら先程の地震の正体はこれのようだ。ランボくん、瓦礫に巻き込まれてないといいけど、と瓦礫を避けながら歩いていた。すると、獄寺くんとハルちゃんの声が聞こえてきた。
「俺の事なんか、あのまま放っといたって……」
「何を言うんですか!獄寺さんに何かあったら、ツナさんや夕空ちゃんが悲しみます!そんなのダメに決まってます!」
「……そりゃそーだな。てめーは10代目や夕空さんのことだけが……」
「それに、ハルだって悲しいです。」
「え?」
「いつもハルにひどいこと言って……いつもハルをいじめて………そんな………そんな獄寺さんですけど……」
途切れ途切れに聞こえてきた会話。
そしてハルちゃんが獄寺くんに何かを言おうとする前に私はその場を去った。
いや、逃げ出した。
その先を聞きたくなくて。
ほんのりと頬を赤くしたハルちゃんに何かを期待するような獄寺くんの反応をこれ以上見るのも嫌でその場に居たくなくて逃げた。
やっぱり獄寺くんはハルちゃんのことが好きなんだ。そしてハルちゃんも獄寺くんのこと……。
がむしゃらに走り続けた先で誰かと衝突した。それは未来の獄寺さんだった。
「夕空さんっ!?」
「っ、獄寺さん…」
「えっ!?何故泣いて」
どこか怪我でも!?と慌てる獄寺さんに私は自分で涙を拭いながら告げた。「安心してください」と。
「え?それはどういうことですか」
わけのわからない顔をする獄寺さんに私は今持ってる力で笑顔を作る。 上手く笑えているだろうか。
「告白する前に失恋しちゃいました。」
「え」
To be continued