この空の下で

□俺が言えること
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「なぁ、リボーン」

「なんだ?ツナ」

「夕空の様子、最近変じゃないか?」


退院して家に帰った日。
家で出迎えてくれた片割れである妹が長かった髪をばっさりと切ってしまっていた。

そして、夕空の生活リズム。
朝早くに家を出て夜遅くに帰ってくる。本人から部活や勉強や塾が忙しい時期なんだと聞いていたが平日ならともかく休日までそんな調子なんて。しかも、同じ学校に通うハルさえもクラスが違うためか最近姿を見ていないと言う。

いつか倒れるんじゃないかと母さんも心配するぐらい。食事も携帯食や栄養剤のゼリーを買って食べているだけだ。

本当に俺が退院するまで夕空に一体何があったというんだ。


「確かに夕空は変だぞ。」

「だよな。」

「と、言うわけで俺が独自で調べた結果、夕空はある人物に思いを寄せていたが、告白する前に失恋したそうだ。」

「失恋!?…あ、ある人物って誰だろう?」

「ツナもよく知っているやつだぞ」

「俺も?…獄寺くんかな」

夕空のやつ、一目惚れでもしたのか。獄寺くんと知り合ってから甲斐甲斐しくもビアンキを見て倒れた獄寺くんの介抱を率先したり。

俺が入院してる時だって、獄寺くんの怪我に障らないようにと頭を下げて、俺を違う病室にとお願いしてたし。

その後も売店の帰りが遅かったから獄寺くんの病室に立ち寄って見舞い品を置きに行ってたんだろうな。たぶん。


「まるで見てきたみたいに鋭いな、ツナ」

「心を読むなよ。ってか夕空のやりそうなことじゃんか。」

「と、言うわけでその原因に来てもらったぞ」

「人の話を聞けよ!」

無視するリボーンにツッコミを入れていると、誰かが俺の部屋に入ってきた。その人は獄寺くんよりも背が高く銀色の髪を短くして翠色の瞳を持つ男性だった。

この人ってまさか……。


「10年後の獄寺だぞ」

「お邪魔します。そして、いつもアホ牛がお世話になっております。若き10代目」

「や、やっぱり!ってか、夕空の不調の原因って10年後の獄寺くん!?」

いや、獄寺さんか、と呼び名に迷っていると彼が率先して「隼人」と呼んで下さいと言うが獄寺くんは獄寺くんだと思い、普通に普段から呼んでる「獄寺くん」で定着した。


「と言うか、獄寺くん。ランボの10年バズーカに巻き込まれたの!?」

「それはちげぇぞ。俺も最初はそう思ったが、コイツは別の方法でこの時代にやってきたんだ。」

「流石、リボーンさん。その通りです。」

「だけど、なんで過去に来たの?」

「それは…、」

俺の質問に10年後の獄寺くんは言い淀む。それをリボーンがこう指摘した。

「お前はずっと夕空を監視していたが、夕空に関わることか?」

「………。」

「何も言わないなら肯定と取るぞ」

「な、何?未来の夕空に何かあったの?」

「っ、申し訳ありません。若き10代目。俺が付いていながら未来の夕空さんに怪我を」

土下座する彼に俺は慌てて止めに入るが、10年後の獄寺くんは床に額をつけたまま語り始めた。

「俺に出会わなければ、俺がお慕いしなければ 、俺と付き合わなければ、夕空さんはあんな目に遭うことはなかったんです。」

俺があの人を…
夕空さんを傷つけた。
笑顔を奪ってしまった。

もし時間を巻き戻せるなら俺と夕空さんが付き合う前に妨害しようと。もうこれ以上夕空さんに辛い思いをさせてしまうのは嫌だから。


「獄寺くんっ!」

心の内を吐露する獄寺くんを俺は無理やり顔を上げさせた。そして涙を零す彼の両頬を俺は両手で包んだ。


「なにが夕空に辛い思いをさせてしまうのが嫌だだ!辛い思いをしたくないのは夕空じゃなくて君だろ!?獄寺くん!」

無言になる獄寺くんに、
俺は構わず言い続ける。


「10年後の夕空は君の隣を選んだんだろう!?共に歩こうとしてくれた夕空をなんで簡単に手放そうとするんだよ!」

「…10代目」

10年後とか10代目とか今は関係ないアイツの、夕空の兄貴として俺がやれることを。


「逃げないでよ。夕空は獄寺くんのことが大好きなんだ。2人の間に何があったか知らないけれどたくさん傷つけた分、それ以上に幸せにしてくれなきゃ困るよ。と言うか」


未来の夕空を幸せにできるのは君しか居ないんだよ。獄寺くん。


「は、はい。必ず幸せにします。申し訳ありませんでした!10代目!」

「俺じゃなくてこの時代の夕空に謝りなよ。あいつ、今大変なことになってるんだから」

「え?」

「確かにな。この時代の獄寺は夕空が好きだが、夕空のヤツは獄寺とハルが両思いだと思って、自分は失恋したと思ってるみてぇだぞ」

リボーンの言葉に10年後の獄寺くんは顔を真っ青にして震える声で言った。


「な、なんでアホ女とそんなことに」



To be continued



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