この空の下で
□epilogue
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「ねえ、入江くん」
未来から来た青年が元の時代へと帰ってから数カ月が過ぎた塾の帰り道に少女が名前を呼ぶと赤茶色の髪をした眼鏡の少年が振り返る。「なに?沢田さん」と。
「前に10年後の自分について話したよね。私もなりたいもの見つけたよ。」
「そうなんだ。沢田さんは何になりたいの?」
「私はね。医師になるよ」
いっぱい勉強しないとね、
と少女は笑う。入江くんと言われた少年は頭もよく意欲の強い彼女ならそのなりたいものになれるのではないかと思った。
「本当に家の近くまで送らなくていいの?」
「ありがとう。最近、迎えが来るの」
「迎えが?」
少年と少女が道端で話していると、後ろから彼女の名前を呼ぶ声とこちらへ向かって駆けてくる音が聞こえてきた。
眼鏡の少年はその声を聞いた途端、真っ青な顔をして少女に「じゃあ、僕はこれで失礼するね」と言って慌てて自分の帰路へと駆けていく。少女は不思議そうな顔をして眼鏡の少年を見送った。
「夕空さんっ!」
お迎えに参りました!と眼鏡の少年と入れ替わるように銀髪の少年が少女のいる場所にやってきた。
「獄寺くん、ありがとう」
「いえ、俺が自分でしたいことをしているだけっスから」
さあ、お家に帰りましょう!と獄寺くんと呼ばれた少年が少女の左手を掴んで歩き出す。少女はその行動に慣れたのか笑う。
しばらく歩いていると、
ふと何かを思い出した。
「そういえば、ビアンキさんとリボーン君の結婚祝いどうしようか?」
「花束とかどうでしょう?」
「花束か、いいね。」
今は6月。紫陽花が咲くこの季節に獄寺の義姉ビアンキと少女の兄、綱吉の家庭教師を勤めるリボーンが結婚式を挙げると言う招待状が届けられた。
しかも日時は明日だと言う何がなんでも急過ぎるスケジュールに周りが困惑しながらも少女は何を送ればよいか迷っていた。が、獄寺の言葉で少女は贈り物を花束に決めた。
そして、結婚式当日。
綺麗にドレスアップしたビアンキにリボーンの策略で初めから最後まで破茶滅茶な出来事が続いた。が、リボーンが指輪を贈り、その場はどうにか収まった。少女は怪しげなサングラスをかけていた獄寺がビアンキを見て倒れたのを慌てて介抱する。
そんな時にビアンキによるブーケトスが始まって結婚式に参加していた女性たちは待ってましたと自分に花束が来るように声をかけるものもいた。が、 ビアンキは穏やかに笑みを浮かべた。「ごめんなさいね。」と。
「夕空っ!」
投げたブーケは獄寺を介抱する少女、
夕空に届けられた。少女は驚いたようにビアンキを見た。ビアンキはこう言った。
次はあなた達の番よ。
「2人で一緒に幸せになりなさい」
過去も現在も抱き締めて、
未来へ続く道をあなたとともに、
一歩ずつ歳を重ねながら、
これからもずっと、
この空の下で、
あなたとともに歩んでいきたい。
END.