この空の下で

□過去から未来の君へ
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「あ、あの獄寺くん」

「どうかしました?夕空さん」

楽しくないですか?と訊いてくる獄寺くん。そんなことないよっと返す私は現在獄寺くんと遊園地に来てる。

今日は9月9日。リボーン君の情報網で獄寺くんがこの世に生を授かった日である。"あの時"はハルちゃんとの仲を疑ってしまって自分のことしか考えられなかったけれど、獄寺くんと恋人同士になってきちんと彼と対等に向き合おうって決めたんだ。ここは本当のことを言おう。


「あのね、私、絶叫マシーン苦手なんだ」

「え、そうなんすか。今からでもやめますか?」

「ううん、そうじゃなくて、手を」

「手?」

「あの手を握ってくれないかな?」

「っ、は、はい!お、俺の手でよろしければ!」

「ありがとう」

て、手汗とかかいてないよな、俺と顔をほんのりと赤くして呟く彼に思わず微笑む私。ちなみに遊園地のチケットは彼の義姉のビアンキさんから貰ったのだ。


「次の方、どうぞー」

スタッフさんの声にジェットコースターに乗り込む獄寺くんと私。セーフティーガードを下ろす。

「な、何かあれば俺が必ず夕空さんを命懸けで守ります。」

「いや、絶叫マシーンで命は懸けないで。手を握ってくれるだけで充分だよ」

私たちの他にもジェットコースターに乗り込んだ人々、全員セーフティーガードを下ろしたのを確認したスタッフさん。スタッフさんの声でジェットコースターは出発した。ゆっくりと上り詰めていくコースター。

この瞬間がとても苦手だ。

そう思った時、握られていた手が更に力強く握られた。思わず彼を見ると優しい顔をしていた。

「夕空さん、大丈夫です。」
「獄寺くん、ありが……きゃあああ!!!」

私の悲鳴と獄寺くんのうお!?と言う叫び声がコースター内で木霊した。



「た、楽しかったね!」

「はい、あっという間でしたね!」

ジェットコースターを終えて、
近くのベンチで寛ぐ私たち。


「そうだ、俺飲み物とか買ってきます。」

「ありがとう。」

獄寺くんが先に復活して飲み物を買いに出掛けてしまった。私はと言うとある人に声を掛けられた。


「そこのお嬢さん、いいものがあるんだ。ちょっと覗いてみないかい?」

「(こんなところに露天商?)」

不思議に思いながらその露天商に近付いてあるものを見つけた。これって獄寺くんがいつも身に付けてるシルバーアクセサリーだ。へぇ、私のお小遣いでも買えそう。

「気に入ったものがあったかい?」

「あ、あの!これ、ください!」

「毎度あり!彼氏と仲良くね〜!」

そう声を投げかけられながらも露天商を後にした。先程座っていたベンチに獄寺くんが飲み物を持って待っていた。

「夕空さん、どこ行ってたんすか?いないから俺電話を」

「ごめん、ちょっとお手洗いに。電話って……不在着信15件。」

本当にごめんと手を合わせて謝る。獄寺くんは焦ったようにもう無事だったからいいっす。と許してくれた。


「綺麗ですね」

「そうだね、私の家とか見えるかな?」

あの後、獄寺くんのご指名で観覧車に乗っている。オレンジ色に染まる景色でゴンドラの中には私と獄寺くんの2人。

「夕空さん、この観覧車のジンクスって知っていますか?」

「ジンクス?」

「このゴンドラが頂上に行った時に教えます。」

知らないと答えると獄寺くんは嬉しそうにそう言った。

「獄寺くん、お誕生日おめでとう」

「!夕空さん、知ってたんすか」

「うん、あとこれプレゼント」

「これシルバーアクセサリー」

「あの時々でいいので身に付けて欲しいなと思って」

「時々じゃなくて毎日身に付けます!お守りにします!」

ありがとうございます。と頭を下げる獄寺くん。お守りって大袈裟だな。

「あ、獄寺くん、頂上だよ」

「えっ!?もうっすか!?」

「それでジンクスって何?」

「そ、それは、……夕空さん、好きです。俺と正式にお付き合いして下さい」

「!……はい、喜んで」

「ありがとうございます。あと、名前、隼人って呼んでください」

「隼人くん」

「夕空、キスしてもいいっすか?」

「あ、は、はい。」






10年後ー



「隼人くん、お誕生日おめでとう!」

「ありがとうございます、夕空さん」

「あれ、そのシルバーアクセサリー」

「はい、10年前に貴女が初めて贈ってくれたものです。俺の宝物です。」

「本当にお守りにしてくれてるんだね、ありがとう。そういえば、あの観覧車の頂上のジンクスってなんだったの?」

「それは、ですね。」

頂上でキスしたカップルは永遠に一緒にいられるんですよ。と彼は本当に嬉しそうに私の耳元でそう囁いた。


END

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