この空の下で
□病室で過ごす誕生日
1ページ/1ページ
「……。」
夜、りんごの皮を慣れた手つきで剥いていく。病室のベットでは未だに麻酔が効いているのか、彼、獄寺くんはまだ目を覚まさない。
今日は獄寺くんの誕生日、だった。みんなには内緒でプレゼントを買いに少し遠いお店へと足を運んだ帰り道。事件は起きていた。リボーン君曰く、他校の生徒と喧嘩したそうだ。リボーン君の言う喧嘩というのは、下手をしたら命に関わるもの。綱吉くんを筆頭に山本くん、笹川先輩、そしてあの並盛最凶と謳われる雲雀さんも別の病室で治療を受けている。喧嘩した他校の生徒がどうなったかはわからない。リボーン君は感情の読めない顔で「掟を破ったんだ、ただではすまないだろう」って、こわい。
以前、10年後の未来から来た獄寺さんは何も言わなかったけれど、私を過去の自分とくっつかないようにしてたからそれと関係あるのだろうな。
「んっ、…夕空…さん…?」
「あ、獄寺くん、目を覚ましたんだね」
先生を呼んでくる、と包丁とりんごをお皿に置いて椅子から立ち上がる。すると、ぐいっと怪我人とは思えない力で左腕を掴まれて獄寺くんの胸へとダイブ。
「ご、獄寺くん!?」
強く強く抱き締められる。彼が胸を怪我しているのは知っている。だから無理をさせてはいけないとわかっているのだが。
「ご無事で良かったです」
嗚咽混じりにそう言われてしまうと何も言えなくなってしまう。私も軽く抱き締め返して「ありがとう。隼人くんも無事で良かった」と言った。
「りんご、食べれる?」
「俺のために剥いてくださったんですか!?ありがとうございます!」
いただきます!と獄寺くんは次々と皮を剥いたりんごを平らげていく。それを見て私は安堵した。未来の獄寺さんもこんな気持ちだったのかな。なんて未来のことはわからないけど。
「夕空さん?」
「あ、りんご食べ終わった?そろそろ先生を呼んでく「あの俺、今日誕生日だったんです」」
言葉を遮られて、獄寺くんの言葉に頷いた。「知ってたよ」と。
「え?なんで」
吃驚している獄寺くんにビアンキさんから聞いてたと話すと不満そうな顔をして「姉貴のやつ、夕空さんと仲良すぎだろ」と小さくぼやく。
「それでプレゼント買いに少し遠い町へこれを買いに行ったんだ」
綺麗に包装されたものを獄寺くんに渡す。彼は包を開けるとますます驚いた顔をして私を見つめた。「夕空さん、これって」と。
「隼人くんと言えばシルバーアクセサリーかなと思って」
「俺の欲しかったやつ、なんで」
「これつけた隼人くん、見てみたかったから」
綱吉くんには内緒だと、と唇に左人差し指をつけて笑うとまた獄寺くんに左手を掴まれて今度はベッドに押し倒される。これには私も驚いて軽い悲鳴をあげた。
「夕空さん、夕空さん」
キスしていいっすか?と問われる。
が、答える前にもう唇は獄寺くんの唇と重なっていた。
「お誕生日おめでとう、隼人くん」
「はい!ありがとうございます!」
ナースコールを押すまであと…
そして、様子を見に来たシャマル先生と獄寺くんが言い合いを始めるまであと…
END