series2

□休憩のひとときに
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「……。」

解散した後、会議室には私と広瀬さんだけが残っていた。

私は先程の会議内容を箇条書きにしてノートに纏め、広瀬さんはと言うとホワイトボードに貼られたままである喫茶店の完成図を見つめていた。私には彼女が何かを考え込んでいるように見えた。

静かな会議室では時折私のシャーペンを走らせる音だけが響いていた。


「…先輩。私、ちょっと跡部先輩に模擬店の在り方について話し合ってきますね。」

「わかった、いってらっしゃい………え」

沈黙の末、口を開いた広瀬さんの言葉にノートを書くのに必死になっていた私は適当に返事をした後、彼女の言った言葉が妙に引っ掛かってノートから顔を上げた。

広瀬さんは居なかった。さっきの言葉からして跡部くんに意見をしに委員会本部に行ったのだろう。


「…凄いな」

呟いた言葉に「何が凄いん?」と返ってきた。声の聞こえたほうを見ると忍足くんがこちらに歩み寄ってきていた。

「これさっきの会議の内容か?」

「うん、箇条書きで纏めてるところ。」

「へぇ相変わらず真面目チャンやねぇ」

「…忍足くんはどうしたの?」

「忘れもんや。」

ノートを覗き込むのを止めた忍足くんは先程まで自分が座っていた場所を漁り始めた。

目当てのものが見つかったのか取り出す。机の下から出て来たのは可愛い柄の付いたブックカバーに包まれている文庫本だった。


「本?」

「そや、暇な時間にでも読もう思うてな。持ってきてん」

「ふーん、今はどんなジャンルを読んでるの?」

「純愛物や。まだ読み始めたばかりやけど結構ええ作品やと思うで」

最初は題名に惹かれてしもうたんやけど、物語を読んでいくうちに主人公がな…。

「んで主人公を助けるために動く恋人に思わず感情移入しそうになって。…あっ、すまんな風宮さん。つい熱くなって語ってしもうた。つまらんかったやろ」

「ううん、聞いてて楽しかったよ。忍足くんは話すの上手だね」

「…え」

「え?」

「引かんの?」

「はい?」

「いや、風宮さん以外の人にもこうゆう話をするんやけど大抵の人間は俺が恋愛語ると気色悪いってからかうからな。」

なんかめっちゃ新鮮な反応やんな。と困り気味に眉を下げてはにかむ忍足くんからは普段の近寄り難い雰囲気が消えていた。本当に好きなんだね。


「あ、いけない。次委員会で場所決めの会議があるんだった!」


また聞かせてね。と言って私は本部に向かうべく忍足くんと別れた。


To be continued.
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