series1

□episode33
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「忍足くんって、この後は水汲み?」

合宿所に戻って私がそう尋ねると忍足くんは言った。「ああ、そうや。」と。

「さっきのお礼に手伝わせて」

「そうか、それはありがたいな。頼むわ」

「うん。」


食堂に水を入れるためのポリタンクを取りに行って、水を汲みに湧き水のところへとやってきた。


「ほな、まずは水汲もか。水汲みの方、頼むな。俺はポリタンク運ぶから」

「わかった」

忍足くんが分担を決めて私は湧き水をポリタンクへ入れていく。ポリタンクが水で満タンになると、それを忍足くんが運んでいく。ポリタンクを運んでいた忍足くんが戻ってきた。


「運んできたで。水はまだか?」

「うん、もうしばらく掛かると思う」

「そうか。ほな、水が汲み終わるまでちょっと話でもしよか」

忍足くんの言葉に頷くと、忍足くんが尋ねてきた。「風宮さんはどんな音楽が好きや?」と。


「私?私はね、クラシックが好きかな。特にモーツアルトが好きで」

私の言葉に忍足くんが目を見開いて驚く。「へえ、ホンマか」と。


「うん、あるゲームで知ってクラシックもいいかなと思って」

「ゲーム?まあええわ。ほな質問するで。モーツアルトのケッヘル番号525番はなんや」

「疑ってるの?アイネ・クライネ・ナハトムジークだよ」

「正解や……ホンマに知っとるとは思わへんかった」

「こらこら。それで忍足くんはどんな音楽が好きなの?」

私が忍足くんに話を振ると彼は目を閉じて言った。「秘密や」と。

「え?それはずるいよ」

「ほな、教えたったら何でもするか?」

「な、何でもって、その取引は不公平じゃないかな」

「ほな、秘密や」

「忍足くんのケチ。」

しばらくそう話していると、ポリタンクが水で満タンになった。私たちもまた自分の作業に戻る。


「これで最後だね。」

「そやな。俺がこれ運んだらおしまいや」

お互いに労わりながら忍足くんとの水汲みの作業は終わった。広場に戻ってくると忍足くんが何かを思い出したように私の名前を呼んだ。


「え、何?」

「……はぁ、そうやない。そうやないんや」

何かを考えるように彼は首を振る。それに私は首を傾げて彼が何を話そうとしているのか待っていた。


「そうやな。自分は、好みの髪型とかあるか?」

「好みの髪型?」

「例えば、

A .不二や伊武みたいな直毛サラサラ系
B.俺や手塚みたいなナチュラルクセ毛系
C.桃城や宍戸みたいなさわやか短髪系」

「(なぜ選択問題形式?)ナチュラルクセ毛系かな。」

忍足くんの出題に私はそう答えた。忍足くんは嬉しそうにうんうんと頷く。そんな忍足くんに私は好みの理由を話した。「私もナチュラルクセ毛だからなんか親近感が湧くんだよね」と。


「そんなもんなんか?その心理はわからへんなぁ。まあ、現状のままでええっちゅう事は収穫や」

忍足くんはそう言って笑った。私の好みの髪型を訊いてくるなんて忍足くん、急にどうしたんだろう?まあ、彼が嬉しそうならいいか。そう思いながら私達は食堂に向かった。


「今日の作業は、いつもより少しハードになった。事情は乾と柳に説明してもらう」

昼食を終えると手塚くんがそうみんなに言った。手塚くんに言われて乾くんと柳くんが口を開いた。


「少しトレーニング要素を高めるべく収穫量、及び作業量をあげておいた」

「不足している物も出てきた様なのでな」

「そういう訳で、作業スケジュールは次の様になっている」

そう言って手塚くんはスケジュール表を広げた。その量に切原くんがげっ!?と思わず声をあげた。


「生活レベルの向上と肉体強化か。一石二鳥だな」

「マジかよ……」

「探索はもう少し遠くまで調べる事になるが、十二分に注意する様に」

そう言う手塚くんに大石くんが声を掛けた。「手塚、蒸し返す様で悪いんだけど、やっぱり昨日伊武が行った場所、全員で重点的に調べてみないか?」と。


「大石……お前の気持ちはわかるがもう少し冷静になれ。今は一ヶ所を調べるより、より多くの場所を調べた方がいいだろう」

「う……そ、そうか」

「大丈夫だよ、大石。今日は何か見つかりそうな気がするよ」

不安そうな大石くんに不二くんがそう言って励ましていた。

「では、以上だ。各自作業に掛かれ」


To be continued.


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