series2
□眠れる羊と走る兎
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アトラクションのミーティングを終えた私は委員会本部に報告し、借りていたパソコンを返してきた。
広瀬さんはもう一度跡部くんと喫茶店に関して打ち合わせをしてくると言って彼を探しに何処かへと走っていった。
私はと言うとある人物を探しに広場へとやってきた。今日も日当たりがいいから、きっとそこに彼はいるだろう、と予想して。
「……やっぱりここにいた」
ジロくん、起きて!と眠る彼の身体を揺らしながら声を掛ける。その声にジロくんが反応して閉じていた目を少しだけ開いた。「あ…!葉月ちゃんだ、どうしたの?」と。
「確認なんだけど、ジロくんはアトラクションでストリートダンスに参加するんだよね?」
「え?そうだっけ?」
「うん、自分でそう言ってたけど」
「言われてみれば……そんな気もする〜」
ありがとう、葉月ちゃん。とジロくんがそう言った。ジロくん曰く、私に言われなかったら、すっかり忘れるところだった。じゃあね〜と言い残して何処かへと歩いて行った。
「……。」
ジロくんって、昨日広瀬さんから彼の話を少し聞いていたけど、いつも寝てばかりだ。
テニスの試合と比べて学園祭の準備はつまらないのかな?一度ちゃんと聞いてみよう。
ジロくんについて考えを纏めていると、視界に赤い髪が入った。
あそこで走っているのは…
「向日くん!」
「えっ!?あ、ああ。風宮、何か用か?」
私が呼び掛けると、走っていた向日くんが慌てて立ち止まってこちらを見た。彼が着ていたのは制服ではなくテニスウェアだった。
「(テニスウェア……)えと、ごめん、練習中だった?」
「れ、練習?違うって。ただの遊びだ、遊び」
「……そうなの?ランニングの最中だったんじゃ」
「違う違う。この俺がランニングするわけないじゃん。気にするなって。で、何?」
「いや、大した用事じゃないの。練習中だったら後で」
「だから、練習じゃねぇって!」
「だけど、その汗は…」
私がそう指摘すると向日くんはこう答えた。「あ、遊びだって汗くらいかくだろ」と。
どう見ても本格的なランニングだったと思うのだけど……。
「………なんだよ?なんか言いたそうだな?」
「いや、遊びでも汗がすごいから倒れないようにちゃんと水分は取ってね。あと、これプリント」
「お、おう」
じゃあね、と私は広場を去ることにした。向日くん、ランニングを……いや努力しているところを誰にも見られたくないのかもしれないな。もし、そうだったなら悪いことしちゃったかもしれない。ごめんね、向日くん。
To be continued.