series2

□語る彼と将来計画
1ページ/1ページ


「あっ!やったーは!氷帝の風宮!」

「久しぶりやっしー」

「お・か・わ・り!」

「コーレグース(島とうがらし)要るかねぇ?」

8月29日、委員会本部の帰りに食堂を横切ると比嘉中のみんなに捕まった。ただし田仁志くんは食事に夢中である。知念くんは何故か島とうがらしを私に勧めてくるが丁重にお断りした。


「南の島ではあなたとは接点があまりありませんでしたね。」

「そうですね。私は山側をサポートしてましたから」

木手くんの敬語に吊られるように私も敬語で対応する。比嘉中の人たちと話すのはこれが初めてである。


「本当にあなたのところの部長は派手なことがお好きですね」

「あの馬鹿でかいの本当に模擬店の範疇内か?わん達や青学の喫茶店よりも凄いぜ」

「確かに外観は大きいですけど、経費については模擬店の範疇内に収まっています。」

「なるほど。ならいいです。」

「あ、あの私からも質問いいですか?」

「なんだよ?」

「木手くんはアトラクションで和太鼓。甲斐くんと平古場くんはストリートダンス。…えと田仁志くんと知念くんはアトラクションに不参加なんですか?」

「ええ、彼らには私達がアトラクションに参加する時間帯に店番をしてもらいたいのでね」

「慧くん1人だと店のものをつまみ食いしちゃうからな。」

「知念はそれの見張り役よ」

「なるほど。…では、私は仕事に戻りますのでこの辺で失礼します。」

模擬店頑張ってくださいと私はそう頭を下げて比嘉中のみんなと別れた。比嘉中の彼らと初めて話したから凄い緊張した。言葉遣い変じゃなかったよね。はー。


「風宮先輩!おはようございます!」

「あ、広瀬さん。おはよう」

「先輩、さっき広場で忍足先輩と向日先輩が深刻そうな表情で話してましたよ」

「話ってどんな?お昼のたこ焼き作りのこと?」

「いえ、多分テニスの話だったと思います。」

「テニス?」

首を傾げる私に広瀬さんは口を開いた。なんでも広瀬さん曰く、忍足くんが困り果てて向日くんに相談していた、と。話の内容は忍足くんがなかなか手強い相手に対して何度アプローチをかけても柳に風の状態なのだと。


「……それは難儀な相手だね」

「風宮先輩は気にならないんですか?その手強い相手って」

「気にならなくはないけど、今はお昼にやるたこ焼き作りが優先。調理室の確保してあるからもう行こうか」

「はい、そうですね」

私の言葉に広瀬さんが頷いて、私達は調理室へ向かう。途中でたこ焼き組と合流し、調理室に入って各自たこ焼き作りを始めた。もちろん、たこ焼き組だけではなく私達運営委員もたこ焼き作りの準備をする。たこ焼き作り、楽しみにしてたんだよね。上手く焼けるといいな。



「……こう、ですか?」

忍足くんがまず確認したのは日吉くんのたこ焼きの焼き具合だ。忍足くんが上達したなと褒めると彼は淡々とした態度でお礼を言った。広瀬さんも感心したように日吉くんに声を掛けた。「日吉くんは飲み込みが早いね」と。


「フッ……まあな」

広瀬さんに対して日吉くんは嬉しさを隠さずに言った。家でも頑張って練習しているのかなと思っていると向日くんが忍足くんに声を掛けた。「俺の方はどうよ、侑士?」と。


「まあ、焼き方は50点やな」

「点数厳しいぞ」

「いちいち跳んだりはねたりせんかったら、あと10点やる」

「……じっとしてると身体がなまるんだよ」

そんな向日くんに私と広瀬さんが苦笑を零す。忍足くん曰く、この分なら当日までにはみんな合格点は取れそうやな、と。



「忍足先輩のおかげです。」

「いや、自分らもよう頑張っとるで」

「そんな、私は風宮先輩達のようにあんまり役に立ってないです。」

「謙遜しないで。私も広瀬さんに助けてもらってるし」

「せや、色んな手配やってくれてるからこっちもスムーズにやれるんや」

「おう、よくやってるぜ」

「ど、どうもありがとうございます」


この後、自分達の作ったたこ焼きを混ぜてみんなで評定と言う名のお昼ご飯にして食べた。




「たこ焼きを焼く練習、向日くんも日吉くんもだいぶしてるみたいだね」

「そうやな。けど、焼き加減がまだまだや」

お昼が終わった私は空き時間に忍足くんと広場で先程作ったたこ焼きの話していた。


「厳しいね。だけど、忍足くんの焼くたこ焼き、本当に美味しかったから、厳しくなるのもわかる気がする。忍足くんは本当に上手だね」

「家に家庭用のたこ焼き器あるし、まぁ慣れやな」

忍足くんの言葉に私は言った。「忍足くんのご家族の皆さんはたこ焼きが好きなんだね」と。


「まぁ好きな方やろな。俺はどっちかっていうと、食べるよりも焼く方に興味があるな。覚えてへんけど、小さい頃はたこ焼きを焼く人になりたかったらしい」


「へぇ……たこ焼きをくるっと綺麗な球にするのが楽しかったのかな?」

「今も結構楽しいし、そうかもな。あと、俺が焼いたんを美味しそうに食べてもらうんも、楽しいで」

「忍足くん、なんだか本職のたこ焼き屋さんみたいだね」

「将来の夢がこだわりのたこ焼きを食べさせる店の店主っちゅうのも悪ないな。風宮さんは、たこ焼き屋ってどう思う?」


忍足くんにその話題を振られたので私も素直に答えた。


「私はちょっと邪道かもしれないけれど、種や具をアレンジしたら色々な物が作れそうだよね。お菓子作るの好きだし、甘いたこ焼きとか開発してみたいな。」

「それもなかなか楽しそうやな。繁盛しそうやで。俺と風宮さんの店」

「え、忍足くんと私の店?」

「あれ、気付かんと言うとったん?どこをどう聞いても、俺らの明るい将来計画やで?」


「ちょ、ちょっと待って!別にそんなつもりで言ったんじゃないよ!」

「そうなんか?風宮さんもずいぶん積極的やなって喜んで聞いとったのに」

「だ、だから!そうやって私で遊ぶのやめてよ!」

私が焦りながら言うと忍足くんは堪えきれなかったのか、はははとお腹を抱えながら笑い出す。


「お、忍足くんのいけず!」

頬に熱を持ちながらも私は忍足くんにそう言った。

To be continued.
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ