series2

□今年最後の夏休み
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「あ、忍足くん。おはよう」

「おはようさん」

8月31日。
昨夜、忍足くんに電話で明日遊園地に出かけないかと誘われて駅前までやってくると先に彼が待っていた。

「ごめんね、待った?」

「いいや、ちょうどええタイミングやったわ」

「そっか、良かった」

「ほな、行こか」


忍足くんの言葉に私達は駅から遊園地へと移動するために動いた。遊園地に着くとどこも家族連れや恋人達がいっぱいいた。すれ違う彼女たちは忍足くんを一目見ては振り返っている。かっこいいもんね、忍足くん。


「どこから回ろうか?」

「どこがええ?」

「私が決めていいの?」

「もちろんや」

「だったら、ループコスターから」

「高所恐怖症なのに一発目から派手やな。大丈夫か?」

「忍足くんとなら大丈夫だよ。怖かったら手握ってもいい?」

「ええで、行こか」

「ありがとう」


私達は乗り場に向かった。ループコスターはさすがと言うべきか迫力があって思わず叫びながら先程宣言したように忍足くんの手を握った。忍足くんは苦笑を零す。彼曰く、もっとスピードが上がっても大丈夫だとか。すごいな。


「結構叫んどったな」

「叫ぶと気持ちいいんだよ」

「それと手もまだ繋いだままやけど」

「あっ、ごめんね。」

そう言って彼の手を離そうとしたのだけれど、

こそこそ

「おい、あの子可愛くね!?」

「声かけちまうか?」



「(この子は俺の大事な子や)……いや、このままでええよ。ほな、次行こか。何がええ?」


繋いだ手はそのままで今度はおとなしめのウォーターライドへ向かった。涼しくて気持ち良かった。忍足くん曰く、夏はええけど、冬場は辛そうな乗り物だとか。その後も色々な乗り物に乗った。



「お腹、空いてへんか?」

「ちょっと空いてる」

繋いだ手を放して遊園地から街へと戻ってきた私達は忍足くんの行きたい場所がある場所へと向かった。


「行きたい所ってたこ焼き屋だったんだね」

「評判がええって聞いたから行ってみたんやけど……失敗やったな」

「そうだね。忍足くんのたこ焼きの方が美味しいよ」

「大体なんでたこ焼きにキャベツが入っとんねん。あれはたこ焼きやのうてお好みボールや」

「参考にはなりそうもないね」


「そうやな。おわびにちょっとええとこに連れてったるわ」

「いいところ?」

「ああ、時間は大丈夫か?」


忍足くんの言葉に私は頷くと彼はちょっと遠いけど行こかと言ってとある場所へ連れて行ってくれた。


「うわぁ……きれいな夕日」

「ええ眺めやろ?」

「うん、素敵」

「……よっしゃ、ムードは盛り上がったな」

「え?」

「ああ、いや。こっちの事や」

「南の島の合宿の時も思ったけど、夕日って……刻々と色が変わってすごく幻想的できれいだよね」

「俺に言わせたら……風宮さんの方が幻想的やで」

「へ?」

「夕日の色に染まった葉月ちゃんは……きれいや」

きれい……?
あ、きれいって言われたのは初めてかも。だけど、どうして急に。


「その可愛い顔が赤いんは夕日のせいか?それとも俺のせいか?」


「そ、それは……」

「突然やけど、俺のパートナーになってくれへんか?」

「えっ?それって……」

もしかして…だけど私になんて……
それにパートナーって…

「なんでやねん、私より向日くんって最高なパートナーがいるじゃない」

「は?」

「常々漫才に誘ってくれるのは嬉しいけど、忍足くんにはテニスがあるでしょう?」


「え、いや、ちがう……がな……自分……こんな時までボケんでも……」


「ん?」

「いや……これは俺の詰めが甘かったんやな」

「?何のこと?」

「い、いや。何でもない」

「あ、夕日が沈んちゃったね」


「そやな……しゃあない、次のチャンスに賭けるか……」


忍足くんは何やら呟いた後、
何事もなかったかのように私を暗いからと自宅まで送り届けてくれた。


今年最後の夏休みを忍足くんと過ごせて嬉しかったな。忍足くんはどうだったかな?なんてね。


To be continued.


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