S.A.D

□欧米かっ! 中編
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「男女混合二人三脚100mリレーに参加する人は入場門に集まってください。繰り返します。」

「風宮さん、行こうか」

「うん。」

遠足が終わり、またあっという間に季節は秋へとなっていた。秋といえば、食欲、読書、スポーツに最適な季節である。

今日は氷帝の運動会だ。
色分けはフランス語で黒(ノワール)組と赤(ルージュ)組と白(ブラン)組。

今回、私のクラスは運動会組分け抽選会で跡部くんのクラスと同じ黒(ノワール)組だ。


遠足から交流を持った滝くんの指名でこれから男女混合二人三脚に参加する。滝くんの足を引っ張らないように気をつけないと。


「風宮さん、緊張してる?」

「うん、ちょっこし」

「(ちょっこし?ちょっと少しって事かな?)ふふ、俺と風宮さんなら大丈夫だよ。」


気楽に走ろうか!と入場門で私達の脚を縛っていた滝くんが立ち上がり私の肩に腕を回して笑い掛ける。そんな滝くんの笑みに黄色い歓声が湧いた。


そうだった。滝くんも氷帝男子テニス部で活躍しているんだった。やはり滝くんの友人としては跡部くん率いる黒(ノワール)組や親衛隊の前で無様な姿は晒したくない。そう思いながら滝くんの肩に腕を回す。




「位置について……レディーゴー!」


パンっ!とピストル音が響くと同時に私と滝くんは駆け出す。滑り出しは好調だ。まだ誰にも抜かされていない。

そこから滝くんの息と足並みを綺麗に揃えて一気に駆けて行く。そうして目の前に迫ってくるゴールテープを切った。


「各選手を誰も寄せ付けずに堂々の1位は黒(ノワール)組!滝くん&風宮さんペア!」


わああ!と湧き上がる黒(ノワール)組の歓声。放送は歓声に埋もれてしまったが、どうやら1着は滝くんと私の様だ。これでキング様に文句を言われることはないだろう。よかった。よかった。



「風宮さん、帰宅部なのにやるねー。俺と同じ速さで走ったのに息一つ乱していないなんて」


何か運動でもしてるの?と滝くんが不思議そうに尋ねてきた。隠す必要もないので、今年の夏から知り合いに付き合って週一でスクールに通っていると告げた。


「へぇ、スクールか。どこの?」

「自由の森テニススクールだよ」

「テニススクールって……」


私の答えに滝くんが目を見開いて驚いた表情をする。そんな滝くんの反応に意外かな?と首を傾げた。男女混合二人三脚100mが終わり、次の競技が始まるので私達は退場した。


ちなみに自由の森テニススクールでは偶にだけれども聖ルドルフのメンバーとも遭遇して時間が合えばお相手をすることもある。


特に観月くんが「是非、聖ルドルフの女子テニス部に来てください!」と勧誘してくるけれど、知り合いに付き合って週一しか通っていない私は断り続けている。


なんでテニスの知識が身に付いていない私をあんな必死で勧誘してくるのだろうか。





「黒(ノワール)組の皆さん、応援合戦お疲れ様でした!続いては赤(ルージュ)組の応援合戦です!赤(ルージュ)組の皆さんは応援の準備をしてください!」


あ、観月くんのことを考えてる間に黒(ノワール)組の応援合戦が終わってしまっていた。見逃してしまったが、家に帰ったら母さんにビデオを観せてもらおう。



「赤(ルージュ)組の応援準備が整いました!赤(ルージュ)組は2年の忍足侑士くんによる闘牛です!」

「は?」


トウギュウ?と首を傾げていると、隣にいた滝くんが「忍足、闘牛とか。やるねー」と言った。


グラウンドを見るとスペインの闘牛伝統な衣装を身に纏う入学式の日から成長した忍足くんの姿があった。



「闘牛は刺激すると危険です!皆さん、叫ばずに静かに見守って応援しましょう!」


放送の言葉に誰もが黙って見守る。
闘牛相手にひらりと赤い布を揺らす忍足くん。闘牛は興奮しているのか赤い布を目掛けて走っていく。それを忍足くんがひらりと躱す。運動会の応援にしては物珍しいものだったが、凄く様になっていた。だけど、本物の闘牛なんかはかなりえぐいんだよね。



「以上、2年の忍足侑士くんによる闘牛でした!忍足くんに盛大な拍手を!」


闘牛が無事に黒服の男達により片付けられて誰もが忍足くんに拍手を送る。忍足くんは帽子を取って頭を下げた。



「忍足くん、本当にお疲れ様でした。続いては白(ブラン)組の皆さんの応援合戦に移ります。応援合戦の次の種目は男子1000mリレーです。選手の皆さんは速やかに準備をお願いします。」


報道委員会の労いの言葉に忍足くんはグラウンドを退場していった。すると、隣にいた滝くんが「あ、呼ばれた。それじゃ行ってくるよ!」と入場門へ歩いていく。


滝くんの背中に私は「頑張ってね!」と声を掛けた。滝くんは振り返ってピースサインをした。


その後の種目もどの組も接戦しながらも総合得点の結果は跡部くん率いる私達黒(ノワール)組が勝利した。跡部くんの選手宣誓の言葉通りだ。ちなみに跡部くんの放った宣誓は「勝者は……俺たち(ノワール)だ!」である。


「いよいよ最後の種目です。部活対抗リレーに参加する選手の皆さんは活動着に着替えて入場門へ集合してください。繰り返します。」


「あれ?滝くんは部活対抗に参加しないの?」

「うん。景吾くんに補欠を頼まれたけど、大丈夫だと、」

「おい、萩之介!風宮と話してないで部活対抗に出ろ!ジローが寝ちまった!」

「思ったんだけど、呼ばれちゃった。」

「う、うん。そうみたいだね。……(跡部くん、もう各生徒の名前と顔が一致してるんだ)」


じゃあ、行ってくるね!と滝くんは跡部くんの後についていく。部活対抗リレーの結果は跡部くん率いる男子テニス部が勝利を収めた。


こうして氷帝の運動会は閉会した。


To be continued
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