S.A.D
□クセが強い!2
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「なあ、知ってるか?宍戸が都大会で無名の学校に6ー0で負けたんだってよ」
球技大会も終えて、私の日常がとうとう原作に追いついた。
まあ、あの球技大会で壊れた眼鏡を買い直すために青春台の駅まで行ったけど、まさかそこで主人公の越前リョーマとヒロインの竜崎桜乃ちゃんと接触しちゃうとは、ね。
宍戸くんの噂はあっという間に学園中に広まった。都大会で負けて正レギュラーから降板されたこと。代わりに都大会で芥川くじゃなくてジロくんが出ること。
この間、嫌な接触したばかりの忍足くんが何故か私を友人としての距離を縮めてきて彼の相棒の向日くんとも一緒にジロくんの放課後に密着したりと大変だった。
「……。」
確か原作では宍戸くんが傷だらけになりながらも努力して正レギュラーに復帰すること。そして、友人の滝くんが宍戸くんに負けて正レギュラーから外されること。関東大会で青学と当たり、負けること。
そして、全国大会には開催地区枠で出場すること。
私が原作で知っているのはここまでである。前世の私は氷帝が好きだった。今も気持ちは変わらない。だけど、原作を知っている分、彼らと関わると何故か罪悪感に蝕まれる。だから、主要メンバーとは関わろうと思えないのだが、そんな私の気持ちとは裏腹に、
「今日の日直は宍戸と…相手の女子は休みか。なら次の日直は風宮だから。風宮、今日は宍戸と二人で日直をやってくれ」
よろしくな、頼むぞ、とH Rを終えた担任の先生は前の席に座っていた私に日誌を渡して教室を出ていってしまった。今度は宍戸くんと日直の仕事を一緒にすることになるとは思わなかった。えと、まずは時間割りを書かなきゃ。
「ーーー以上、今日の学習はここまで。提出課題は日直が集めて職員室まで持ってくること」
起立、礼を終えた私は女子の提出課題を集めていると宍戸くんも男子の提出課題を集めていた。
「宍戸くん、お疲れ様。男子の提出課題、集め終わった?」
「ああ、ジロー以外はな。お前も女子の提出課題は集め終わってるな。なら、それも俺が持っていく」
「えっ?いいよ、宍戸くんは男子の分があるから嵩張ると結構重たいと思うし」
「あ?運動部を舐めんな、こんなの軽いもんだぜ」
「無理しなくていいって、それに宍戸くん傷だらけだし」
「なっ、これは」
「時間が勿体無いからそろそろ職員室に向かうよ」
強がる宍戸くんを軽く無視して私は女子の提出課題を持って教室を出る。その後を追いかけてか宍戸くんが私の隣に並んで歩く。私はちらりと宍戸くんの束ねたポニーテールがゆらゆら揺れるのを見る。
「なあ、風宮」
「今度はなに?」
「お前、滝と仲良いよな」
「うん、そうだよ」
それが何かな?と宍戸くんに問う。宍戸くんは「だよな」と何とも言えない言葉を口にする。その話は職員室に着いたので、その場で途切れた。
放課後、滝くんからメールが来た。内容は試合を観に来てくれない?と言うものだった。滝くんから一度も試合を観に来てとは声を掛けられたことはなかったのに。珍しいと思いながら私はわかったと返信をしてテニスコートに向かうことにした。
「ウソ、でしょう…」
私がテニスコートに着く前に滝くんの試合は終わっていた。滝くんの対戦相手は宍戸くんだった。彼曰く、宍戸くんは試合を観ていた榊先生を追っていったと言う。
「ごめんね、風宮さん。せっかく応援に来てくれたのにっ……俺、宍戸に負けちゃった」
榊先生にも正レギュラーから外されちゃったし。俺、かっこ悪いな。いいとこ見せようと思ったのにと滝くんは鼻を赤くしながらそう言うと持っていたタオルで自分の顔を隠した。
私は"この試合の結果を知っていた"が、滝くんにどう声をかけたらいいのかわからずにその場で立ち尽くした。
To be continued