君と過ごす七日間
□月夜の下で
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「ただいまー。いい匂い」
「おかえり。通勤ご苦労さん」
自宅に帰ると、忍足くんが夕ご飯を作って待っていた。今朝は「いってきます」と「いってらっしゃい」。そして、先程は「ただいま」と「おかえり」。
うん、家に人がいるってあったかくていいなぁ。相手が忍足くんだと特にそう感じるよ。そう思いながら仕事着からラフな格好に着替えた。
「美味しい」
「おおきに。口に合ってよかったわ」
「普段、家事の手伝いとかするの?」
向かいに座ってご飯を食べている忍足くんにそう尋ねると彼は頷いて「するで」と答えた。お母さん思いのいい子だな。
「なあ、これ食べ終わったら付き合うてくれへん?」
「テニスね。わかった。いいよ。」
お手柔らかにね、と付け足すと忍足くんが善処すると言った。それから私達は今日あった出来事を話してご飯を食べ終わる。
洗い物の片付けを済ませて、昨日見つけたナイター整備が良いフリーのストリートテニスコートへ忍足くんと向かった。テニスコートは珍しく私達以外無人だった。
「時間はどうする?」
「30分でどないや。サーブは千紗さんからでいいわ」
「わかった。じゃあ、行く…よっ!」
「ええ球打つやん。せやけど、打ちごろやんなっ!」
「えぇっ!?善処するって言ったよねっ!?」
「そう言いながらもボールも拾えてるやん!テニス上手いな、千紗さん」
「それはどーもっ!」
なんだかんだ言いながらもパコンパコンとラリーが続く。と、言うか続くように忍足くんが微調整してくれていると、思う。そして、30分を報せるアラームが鳴ったとともにロブが飛んできて私がスマッシュを放つと『羆落とし』で返されて終了した。
「はい、スポーツ飲料とタオル」
「おおきに。」
「家に帰ったらお風呂沸かして入ろうか」
「ええな、それ」
お互いに滴り落ちる汗を拭きながら夜空を見上げると月が私達を照らしてくれていた。
「月が綺麗やな」
「死んでもいいわ。……なんてね。」
To be continued.