君と過ごす七日間

□瞳を閉じて
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「じゃ、いってきまーす!」

「いってらっしゃい」


ひょんなことから千紗さんの家にお世話になってもう6日目が経とうとしている。


ここの家主の千紗さんは今日も元気に仕事へと出掛けていった。千紗さんの職業は中小企業の営業事務だそうだ。

たまにハッピーコールが鳴り止まないらしい。なんや大変そうやな。

せやからたまに疲れた顔をして遅く帰ってくる。そやけど、俺が「おかえり」と声を掛けるとふやけた顔になって「ただいま」と返ってくる。二十代半ばと言っていたが、背ぇも岳人よりちっこいし、顔もどちらかと言うと童顔や。脚のほうは……まあまあ健康的やな。

俺には姉貴がおるけど、千紗さんはどちらかと言うとしっかりした妹ぽい。

「今日はどないして過ごそうか」

昨日、買ってもらった高校の問題集を解くのもええけど。もう少しで終わってまう。いつもやったらテニスで時間を潰すんやけど、俺は明日で居なくなる。今までお世話になった分、何か恩返しをしたいと思うとるんやけど。

料理は交代で作る時がある。
洗濯はちょっぴり恥ずかしいんやけど千紗さんがやってくれている。なんでも彼女の家族は男所帯で昔から洗濯係は千紗さんの仕事やったそうや。まあ俺が彼女の下着を洗うほうが問題やな。これが姉貴だったら殺されとるわ。

「あ、せや。掃除」

以前入れてくれた千紗さんの部屋、あそこだけは掃除してない。千紗さん曰く、「入ってもいいけど引かないでね。」と。

以前入った時はなんもなかったけど、なんや引かれるもんでもあるんやろうか?

千紗さんは不思議な人や。
今までおかんや姉貴以外の異性と生活したことなかったけど。

俺のことが大好きだのファンだのって言うてたけどあまりベタベタしてこないし、深入りもしてこん。

社会人は皆ああなんやろうか。


「やっぱ綺麗やん。どこも散らかって……」

掃除機を持って、千紗さんの部屋に入る。中はどこも散らかってない。そう思いながら部屋へと入っていく。

「これ俺か?」

見つけたのは、デスクの隅に置かれた不敵な笑みを浮かべる小さなフィギアの【俺】。前回はホラーのせいで全然気付かんかったわ。


『ゆーしのいけずっ!』


「くくくっ、ほんまかわええなぁ。千紗さん」

探せば多分俺のグッズとかまだ出てくるんとちゃうか。この借りてる伊達眼鏡とはまた別のものが。まあ深入りは可哀想やからせんけど。


「ええ匂いや。なんか眠たくなってきたな」

瞳を閉じて、彼女の部屋を堪能する。そして千紗さんのベッドに寝転がる。

天気もええし、
ふかふかで気持ちがいい。


「千紗、……好きやで」

もうすぐ会えなくなっても、
ここに俺が在ったって証を君に。

帰ってきたら、
残りの時間をすべて君に捧げる。

To be continued.


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