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□とある朝の通学路で
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『助けて!』と言う声が聞こえたら誰でも助ける。それが敵でも味方でも。
私の住むキャットタウンにはヒーローがいる。そのヒーローの名前は『ニャンダーかめん』。冒頭の言葉はニャンダーの決め台詞だ。
『またまた今日の人気ランキングもニャンダーかめんが1位だぁ!』
テレビ画面の向こうにいるかめんTVのキャスターであるミケさんの声を聞きながら朝食を採る。
これが私にとっての1日の始まりだ。
「ごちそうさま、ママ」
「あら、洗い物持ってきてくれたのね。ありがとう。車に気をつけて行くのよ?」
「うん、いってきまーす」
いってらっしゃいと言う声に見送られた私は鞄を背負って家を出た。私の通う学校は中学で小学校よりも遠い場所にある。
ちなみに制服はピンクのブレザーだ。
「夢のマント広げて〜♪雲より高く…あっ」
あまりにも天気がいいのでつい今流行りの歌を口ずさんで通学路を歩いていく。その途中で私の視界にひらりっと白い何かが舞った。
歌を止めてそれに駆け寄った。
掴んで拾い上げるとそれは白いハンカチだった。
「…誰のだろう?」
砂埃を掃いて落とした主を捜すため辺りを見渡した。
その前方に慌ただしく走っている黒いランドセルを背負った男の仔が目に入った。
あの仔のかな?
まあ違ってたら違ってたで別の方法を考えよう。それよりもまずはあの仔を追いかけて声を掛けてみよう。
「そこの君、待って!」
「えっ?ひょっとしなくても僕のこと…?」
「そう!黄色い服を着て水色のズボンを穿いている君のことだよ!」
「な、何か用?」
僕、急がないと学校に遅刻しちゃうんだけど。と困ったような感じで立ち止まった男の仔がこちらに振り返ってくれた。
「呼び止めちゃってごめんね。お姉ちゃん、このハンカチを君の落としたものじゃないかと思って追いかけてきたんだ」
違ってたらごめんねと前置きして拾ったばかりのハンカチを男の仔に見せた。すると彼は「…あっ」と目を見開いて自分のズボンのポケットを漁る。
そこには何も入っていなかったのか男の仔が恥ずかしそうに頭を掻いていった。
「ぼ、ぼくのみたい。」
「そっか。よかった。大切なものはきちんとポケットの中に入れなきゃダメだよ。また落としちゃうかもしれないからね」
ハンカチを手渡して男の仔の頭をポンと撫でる。ハンカチを受け取った男の仔が驚いたような顔をした後に「うんっ!」と笑った。
「…それじゃあお互い学校に遅刻しないように頑張ろう!」
じゃあね!と手を振って私は男の仔が行く道とは違う道を歩き出した。
ついニャンダーかめんみたいな口調で注意しちゃったけど。
変じゃなかったよね?と歩く自分に言い聞かせながら照れくささで火照る頬を両手で覆った。
To be continued.