番外編

□滝くんと図書館
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ある夏の日
【図書館】


「風宮さんって忍足のこと好きでしょ」

「!?…え、何言ってるの滝くん」

唐突だなと笑う君。
その笑う顔からは感情が読み取れない。
ただし、俺は知ってる。

「図星だよね」

「……。どうすればいいんだろうね。」

観念したように少し息をつく君。
どうすればいいか、なんて。
いつも自分の気持ちに素直になれない君。

「俺は、風宮さんが好きだよ」

二年の頃からずっと傍にいて見てた。
君が誰かを想いながら綺麗になっていく様を。想い人は俺ではないことを。
俺は知ってた。ずっと。


「自分の気持ちをぶつけてみればいいじゃないの?」

君を好きになる前から君を見てた。

最近話すようになった忍足のこととか。

君の視線はいつだって忍足に向いてた。嬉しそうに、時には切なそうに微笑んでた。

「風宮さんを苦しめているものは何?」

「……。」

「平凡な自分とは釣り合わないとか思ってる?それ間違ってるから」

「!」

俺の言葉に驚く君。
そうだよ。間違ってる。
忍足は君のことを好きだ。
漫才の相方じゃなくて異性として。
君の傍にいる俺にいつも嫉妬の念を込めた視線を寄越してくるから。

忍足のほうも最近やっとって感じだけどね。

これはもう本人たちの出方次第だ。
俺も誰も手出しできない領域。

君が何に苦しめられているのか。
俺にはわからない。だけど、
これだけは言わせて。

「滝くん?」

「ここにいる君は君だよ、風宮さん。ありのままの君がいいんだ。」

「!…ここにいる私?」

「そうだよ。風宮さん」

俺は君が好き。忍足も好き。
忍足は俺が風邪引いた時、一番にお見舞いに来てくれた。とても良いやつだ。
だから2人が幸せになれるのならこれ以上ないってくらい俺は幸せだ。


『滝くん、私はテニスの勝ち負けはわからないけど。滝くんは決して弱くなんてない。負けた分もっと成長出来ると思う。だから諦めないで。』


君があの日、そう声をかけてくれた時、俺は嬉しかったんだ。我ながら単純だよね。だから今度は俺が君の背中を押す番だ。

「あ、忍足だ」
「え、ちょ、滝くん!?」

「ほら、行った行った」


諦めないで、風宮さん。
俺が君の一番の味方だから。

END

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