番外編
□忍足生誕祭2021
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「風宮さん」
「あ、忍足くん誕生日おめでとう」
本日は10月15日。
忍足くんの誕生日である。
さっきから教室や廊下で女の子たちがプレゼントを渡そうかどうかそわそわしてる。
そんな女の子たちの視線や素振りに気づいているであろう忍足くん。しかし、彼はそれらに気付かぬフリをして私との会話を続ける。
「おおきに。15歳言うたら大人の一歩手前やと思とったけど、なっても全然自覚があらへん。……高校生になったらどうなとるんやろうな。」
「うーん、どうなってるんだろうね。」
忍足くんの言葉にそう返す。
私はもとは大学生だった。
だけど成人式を迎えようとしていたあの時、
私も忍足くんみたいにそう考えていたかな?
なんとなくぼんやりとそんなことを考えていると忍足くんは「そうやろ?」と言う。
「あ、プレゼントはないん?」
「あるよ。はい、忍足くん」
「おおきに。」
開けてみてもええか?と綺麗にラッピングしたものを私から受け取った忍足くんが訊いてくる。
鶯色の包装紙に黄色のリボン。
鶯色なのは忍足くんの好きな色だから、そして黄色は、まあ気分的かな。
「いいよー」
「よっしゃ、ほな開けるで。……おっ!これは眼鏡ケースと眼鏡拭き」
「そう、実用的にどうかなと思って」
「ええやん、とくにこのケースのワンポイント!メガネの絵が俺の丸いメガネに似ててええな」
「そうなんだ。忍足くんにものをあげるならこれかなと思って。あと眼鏡拭きは鶯色で黒猫柄にしてみた」
「へえ、かわええなぁ」
おおきに、と笑みを浮かべて私からのプレゼントを見つめる。どうやら気に入ってくれたみたいだ。
「よかった、気に入ってくれて」
「まあ風宮さんがくれるもんやったらなんだって嬉しいで、俺は」
「えっ?」
たとえば、と忍足くんはおもむろに解いた黄色のリボンで私の髪を結う。
「"プレゼントは私です"とか、な」
「!?」
耳元でそう囁く忍足くん。
低くて掠れたそれにぞわりと肩が震えた。そんな私を見て忍足くんはあははと笑う。
「風宮さん、顔がリンゴみたいに真っ赤かかやで」
「だ、誰のせいだと…!」
「まあ、俺やな」
飄々とするその姿に私はこう返した。
「忍足くんのいけず!」と。
END