番外編

□忍足くんとバレンタイン2022
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「恋の季節やな」


喫茶店でお茶を飲んでいると向かいに座っていて窓の向こうを眺める忍足くんがそうぽつりと呟いた。今は2月…。2月といえばバレンタイン。なるほど。



「もうすぐバレンタインだね」

「そうやねん、千紗さんはバレンタインどう思う?」

誰かあげる人でもおるの?と私のほうには振り向かず窓の外を見つめたままそうぽつりと訊いてきた。

そもそも何故、私と忍足くんがカフェに居るかと言うと、私の会社が催す商業イベントの出張として訪れていたところを偶然彼が見つけたのかSNSでメールが届いた。

『背中だけやけど本屋さんにおるの、千紗さんやろ?』と。

正直、驚いた。
後ろ姿で私だとわかったなんて。

そんなこんなで喫茶店でまったりしているわけである。最初『誰も観てないからメロンソーダ頼んでいいよ』と勧めるとムッとした顔で『なんでわかんねん』と言った。耳を赤くして。かわいかったな。


「ふふ、」

「何笑うてるん?」

「なんでもないよ。さて、そろそろ合宿所に戻らないとみんな心配するんじゃない?」

「なんか納得せんけど、せやな。ほな、また会おうな」

「うん、またね」

そう言って私達は別れた。


それからバレンタイン当日。


「な、千紗さん!?」

「あ、忍足くん、こんにちは」

商業イベントのパーティーにて、
"参加者"としてドレスコードで会場に入ると声を掛けられた。驚きで目を見開いた忍足くんに。

「出張ってこのことかいな」

まさか三船監督の息がかかってるやなんてと何やら小さく呟いた彼は改めて瞳を閉じて深呼吸をする。そして落ち着いたのかニッと笑う。


「もう本命に渡してしもうた?」

「何言ってるの?私の最推しは君だよ」

サインしたラッピングチョコを忍足くんに差し出す。忍足くんはそれを見つめて「おおきに。光栄やわ」と微笑んだ。

「なんや、バレンタインミッション終わってもうたなぁ」

未だにミッションをこなせていない子たちを眺めながら拍子抜けな感じである。その後も色々なミッションが目白押しだよと思ったがこれはまだ秘密なので何も言わないでいた。

こうして、私も忍足くんもまだ起こらない新たなミッションの合間をのんびりと過ごした。

END

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