番外編

□忍足くんとホワイトデー2022
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『運命の相手はーーーー』

あのバレンタインから、
数週間が経過していた。


「……。」

「ゆーし、どーした?」

「大人の女性に物贈るとしたらなにがええんやろ?」

「ああ、バレンタインのお返しのことで悩んでんのかよ」

頭の後ろで腕を組み、面倒そうに岳人は言った。「お前の姉ちゃんに訊いてみたらいいんじゃねぇの?」と。

うーーん、姉貴か。
姉貴には相談したないなあ。
やって千紗さんは社会人や。
大学生の姉貴とはちゃうし。


「何を贈ればええんや」

はあ、とらしくもなく大きなため息を吐いた。その時に千紗さんの言葉が思い出された。

『何言ってるの?私の最推しは君だよ』

大勢の面前で真っ直ぐ俺の顔を見て恥ずかしげもなくそう言い切った千紗さん。言われて嬉しかったけど、なんや今思い出すとあれが大人の余裕ってやつなんやろうか。

「おい、忍足。そろそろトレーニングの時間だ。行くぞ。」

「跡部?あれ岳人は?」

「アーン、向日なら先に行ったぞ」

岳人、相方を放置ってひどない?
せやけど、跡部。跡部か。

「なあ、跡部」
「ふっ、大方、あの女(ヒト)の贈り物で悩んでるのか?」

「流石、跡部。眼力(インサイト)かいな」

「バーカ、そんなの使うまでもねぇ。今のお前はお得意のポーカーフェイスが出来てねぇし。心も閉ざせていねぇ」

丸見えだぜ、と言われてハッとした。
せやったんか。相手に言われんと気づかん時があるんやな。俺、千紗さんのことで頭がいっぱいでテニスのこと忘れとった。

「すまんな、跡部」

「ふっ、ホワイトデーまであと少しだ。さっさと気持ち切り替えろよ。まあ、」

てめえが本気で選んだ贈り物だったらあの女(ヒト)はなんでも嬉しいと喜んでくれるはずだぜ。と跡部はトレーニングに向かう。その背中を俺も追いかけた。やっぱり跡部はすごいなぁ。

彼女のことは俺が一番わかってるって、
自惚れてたわ。かっこ悪いな、俺。

今日の日程が終わったら千紗さんに連絡とろう。ほんで、デートに誘おう。そう思った。けど、

あれからホワイトデーの日が来ても彼女と連絡が取れなかった。俺は中坊、彼女は社会人。時間のサイクルが違うからかなかなかタイミングが合わへん日が続いた。

SNSのメールに既読がつかん。
会いたいって気持ちだけが先走る。
そんな時やった。

メールに既読がついたのは。


「あかん」


それを逃すまいと俺はビデオ通話にした。

『忍足くん、ごめんね。久しぶり』

ビデオ通話の向こうで彼女が申し訳なさそうな顔する。そんな彼女に俺は嬉しくて微笑んだ。

特別なものは何もないけれど、
千紗さんと話すこの時間が俺にとってはとても大切だ。

「千紗さん、会いたかった!」

押し付けかもしれんけど、

『私も会いたかった!』

千紗さんにとっても、
そうあって欲しい。


『運命の相手はカードの絵と同じものを持った人だ。』

『『四つ葉のクローバー?……えっ?』』



END

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