番外編

□忍足くんと追っかけ
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「忍足くん?」

「!?なんや風宮さんか」

「こんなところで何してんの?」

部活は?とテニスウェア姿の彼にそう尋ねると彼は「これには色々と理由があるちゅーか」と言う。そんなことを話していると誰かがこちらへ走り寄る足音と声が聞こえてきた。


「侑士さーん!」

「!?」

何かの包みを持って現れた女の子で長い髪と他校の制服を着ていた。可愛い。

「侑士さん、ついに見つけたべ!おらの手作り弁当もらってけろ!」

女の子の言葉に何故か私を盾にして後ろに隠れてしまった忍足くん。

こら、どうした。忍足侑士。


「えと君、だれ?」

「おめぇこそ誰だべ?めんこいな」

「いや、めんこくはないべ」

「おめぇ出身どこだべ?」

「北陸やけ。君は北海道けぇ?」

「そうだべさ。おら北園寿葉てんだ」

「(北園寿葉、滝くんが言ってたスパイ)風宮葉月」

「(風宮葉月……はっ!)侑士さんのカノジョ!?」

「「(まだ)ちゃうわ」」

北園さんの言葉に思わず言葉が重なる。いや、だってまだ彼女じゃないし。と言うか、

「北園さんって、確か跡部くんが好きやないけえ?」

「そんな過去のことなんて忘れてしまったべ。おいら、侑士さんのことが……きゃっ」

恥ずかしそうに照れる北園さん。
私が後ろを振り返ると忍足くんが首を左右に振った。まるで、「俺は無実や」と。


「カノジョじゃないなら侑士さん、おらに渡してけろ」

「彼女じゃないのやが、渡せんわ」

「なんで」

「私は困ってる友達を見捨てるようなことしない。」

困ってる?と不思議そうに首を傾げる北園さん。そんな彼女に訊いてみた。

どのくらいここに通ってきているのか、そして追いかけっこでどのくらいの時間を消費しているのか。

返ってきた言葉は私でも頭を抱えたくなるほどで少し忍足くんに同情した。
好かれるのも大変だなあ。

「こんな暑い日に追いかけっこしたら2人とも倒れちゃうよ。」

「おい、忍足!早くテニスコートに戻れ!」

跡部くんの言葉に忍足くんは「堪忍な、ほなな」とテニスコートに走っていった。残されたのは私と北園さんだけ。


「……。」

「……おめえ、侑士さんの心が読めるんべか?」

「いや、なんとなく」

「師匠って呼んでもいいか?」

「それは困るな」

そんなことを話しながら彼女と彼女のお手製のお弁当を一緒に食べた今日この頃。

END

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