番外編

□忍足くんと追っかけ2
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「え、北園さん?」

夏季補習を終えて、外に出ると何故か北園寿葉に待ち伏せされていた。と言うか、まだここに通っていたのか。


「おいらのことは寿葉って呼んでけろ」

「は、はあ……、あの寿葉ちゃん」

「なんだべ?」

「えと、何か用?」

「今日こそ決着をつけるべ!」

「……決着って?」

なんの?と首を傾げる私。
北ぞ…じゃなくて寿葉ちゃんは可愛らしく笑って言った。「どっちがより侑士さんの気持ちが分かるか」と。

「……。」

「おいらだってマネの端くれだべ。選手のことならわかるべ」

あ、自分で自分の身分明かした。
まあ帰宅部の私には関係ないし。
それに、忍足くんは……

「自分ら何しとるん?」

「あ、おし「侑士さーん!」……」

「自分、まだ北海道帰ってなかったんか」

「おらと遠距離で付き合ってくれたら帰るべ」

「なんで自分は俺と付き合うことにこだわるんや」

寿葉ちゃんと忍足くんの会話が続く。私はどうすればいいのかわからず立ち往生するしかない。そんな中、忍足くんの言葉に寿葉ちゃんは顔を真っ赤にする。

「おら、嬉しかったんだ。侑士さんがおらのこと……」

「あ、あー!ごめん、二人とも私、伯父さんの店に行かなきゃいけないから先に帰るね。じゃあね!」

風宮さん、と忍足くんの声が後ろから聞こえたが私は逃げるように走り出す。

この湧き上がる感情、思い出す。

これは嫉妬だ。

もう思い出したくないと思ったもの。
認めたくなかったけど、私は……。

「……っ……」

チャリンっ

「あ、いらっしゃいませ!って葉月ちゃん!?」

「あ、星羅さん。お疲れ様です」

忍足くんが好きだ。好きすぎて。
彼女ができるところを見たくない。

「お友達も一緒なんて珍しいわねっ!」

「……えっ?」

お友達?
私しかいないのに?
星羅さんの言葉に疑問符が浮かぶが、
それは聞こえた声で消えた。


「風宮さん、速すぎるわ。逃げ足はまるでケンヤ並みやな。」

「お、忍足くん!?えっ!?なんでいるの!?」

「なんでって風宮さんを追いかけてきたに決まっとるやんか」

「えーっと、2名様ご案内ですね」

私と忍足くんの会話に星羅さんが営業スマイルで誘導する。私達は案内された席へと腰を掛けた。オーダーはあとで聞きにきますねと星羅さんはその場を去った。

「……。」

「……寿葉ちゃんは?」

沈黙が流れるのに耐えきれなかった私は忍足くんにそう尋ねた。忍足くんは「振った」とただそう一言。

「え、なんで……」

「ヒミツや。」

教えたらなんでもするか?と言われて私は慌てて首を横に振った。忍足くんのこう言うところずるいと思う。

「オーダー決まりましたか?」

タイミングを図ったように星羅さんが注文を聞きにきたので私はメロンソーダを選ぶ。それを聞いた忍足くんが何故か反応した。が、何事もなく珈琲を注文。

運ばれて来たのはアイスクリームとさくらんぼが乗った昔ながらのメロンソーダとフレッシュの付いた珈琲。忍足くんはじーっと私を見つめる。私と言うか私が頼んだメロンソーダを。


「忍足くん、良かったら交換する?」

「え、あ、いや気にせんといて」

気にするなと言われても……。
すごい視線を感じる。

「はい、あーんして!」

アイスクリームを掬って忍足くんに向けてそう言うと彼は珍しく顔を真っ赤にした。
意外な一面に驚いていると、忍足くんは意を決して「あーん」とアイスクリームを頬張った。アイスが消えたスプーンを見つめて我に返った。

あ、これって間接キスだ。

「ほんま葉月ちゃんには敵わんな」

そう言った彼に私も顔を赤くした。
私も君には敵わないよ。


END

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