番外編

□忍足くんと推し活
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「君可愛いね!俺らとどっか遊びに行かねえ?いいとこ知ってるんだけどさ」

駅で待ち合わせしていると男の人たちに声をかけられた。

「はあ、あのわたし、人と待ち合わせしてるんですけど」

「いいじゃん、その子も誘って遊びに行こうよ!」

「えと、待ち合わせの相手は「俺や、自分ら俺のお嬢さんに何してくれてるんや」侑士くんっ!」

その汚い手を放しぃと男の人たちの背後でぼそりと呟いた。それに驚いた男たちが慌てて振り返る。


「うわっ、男!」

「マジかよ、待ち合わせ相手が彼氏って」

「しかも背後から低音って怖っ!し、失礼しました!」

顔を青ざめて走り去ってゆく男の人たち。そんな彼らを見送った後、改めて侑士くんと向き合った。


「千一番目の技ってやっぱりすごいね。効果抜群」

「アホか。こっちは気がきやなかったわ。」

はい、消毒と侑士くんがどこからともなくウェットティッシュを取り出し、男の人たちに掴まれていた私の手を拭いていく。ゴミが出たけれど気持ち悪かったから嬉しい。

「ありがとう」

「どーいたしまして。にしても最近ナンパが増えたなぁ」

「そうかな?」

「そうや。まあ俺ん彼女は可愛いからな。(まあ誰にも譲る気はないけど。)葉月ちゃんも気をつけてや」

そう言って屈み、私の前髪をかき分けてちゅっと口づけをする侑士くん。いきなりの顔面ドアップに顔が熱を持つ。


そして、黒曜石の瞳と目が合う。
ち、近い。このままキスされそう……

って違うっ!

「待って待って待って!」と後から襲ってきた気恥ずかしさに慌てて彼の胸板に両手を当てて離れるように押す。すると、いとも簡単に離れた。彼の表情は滅多にお目にかかれない満面な笑み。


「うぶやな。ほんまうちの彼女は可愛らしい」

「公衆の面前でそれはやめて」

「ええやん、俺の前だけでは気を抜いたってバチは当たらん」

「いや、もうバチとかの問題じゃないからね!?」

「せや、上映時間大丈夫なんか?」

「もう人の話は最後まで……ってあー!だちかん、侑士くん急ぐよ!」

「はいはい、ほな」

え、と腕時計を見ていた私。すると、先程消毒された右手を侑士くんがぎゅっと繋いできた。「こっちのほうが近道や」と走る。引っ張られる形で映画館まで全力疾走。さすが、運動部。着いていくのがやっと。


着いた先の映画館ロビーで無事に2人分のチケットが買えてソファーで休憩していると侑士くんが「映画館にはやっぱりこれやろ」とペアセットの大きい器に入ったポップコーンとコーク2つを購入してきた。


「ありがとう。はい、レシートください」

「さすが、葉月ちゃん。しっかりしてるな」

割り勘分をきちんと侑士くんにお支払い。入場アナウンスが流れたので上映の入場へと向かう。向かいながら侑士くんと話す。


「葉月ちゃんが推してるこのシリーズって今回結婚式がメインやろ。」

「そうだね、たぶん。」

楽しみだね、と指定されたシアタールームへと入っていった。


END

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