番外編

□ハッピーサマーバレンタイン2022
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「ハッピーサマーバレンタイン?」

「そうだ。」

夕方、跡部くんに呼び出されて生徒会室で話しているとそんな記念日ってあったかな?と私は首を傾げた。けれど、跡部くんがそんな変な冗談言う人ではないということを私は知っている。

「お前、忍足に気があるんだろう?」

「えぇっ!?」

「俺は気にしちゃいねぇが周りがな。いい加減告白して付き合ったらいいんじゃねぇか?」

アイツもなんだかんだ言いつつ気があるみてぇだしなと言う跡部くん。

前言撤回。跡部くんは恋愛に関しては冗談が言えるようだ。だって、あの意地悪な忍足くんが私に気があるって。

「ふっ、風宮、その顔を見ると俺の言葉を冗談だと思ってるだろう?」

「ここで眼力(インサイト)使わないでよ。跡部くん、狡い」

「アーン、そんなの使うまでもねぇ。で、ハッピーサマーバレンタインの件はどうするんだ?」

「そのハッピーサマーバレンタインで何をしたらいいの?」

「好きだと言え」
「す、ストレート。」

公開処刑じゃん。
そして跡部くん、近い。

「おら、好きって言え」
「す、……ガチャ「跡部、榊監督が…」

「好き」

「……すまん。取り込み中やったみたいやな」

「忍足くん!?」

い、今の言葉聞かれちゃった!?

「これプリント。ほな、お邪魔虫は消えるわ」

「ちょ、ちょっと待って」


え、なんでそうなるの!?


「アーン、忍足お前何を」

「別になんも。ほな、俺はもう帰るわ」


そう言って忍足くんは恐ろしいくらい静かに生徒会室を出て行ってしまった。まさか、先程の発した言葉を勘違いしたんじゃ……!

「チッ、間の悪い奴め。おい、風宮早くあのアホを」

「忍足くん、待って!!」

跡部くんの言葉も聞かずに私は慌てて生徒会室を出て忍足くんの後を追った。

「……。」

「忍足くん、待って!」

彼はゆっくり廊下を歩いていた。私の声になかなか振り向いてくれない。歩く足も止めてくれない。辺りはいつの間に私と忍足くん以外誰もいない。

「忍足くん!……ゆ、侑士くん!!」

止まらない彼を追い越して、
普段は呼ばない忍足くんの名前を叫んで彼の行く先に立ち塞がる。

忍足くんは避けようとするけど、
私は両手を広げてとおせんぼをする。

「……」
「……」

無言で見つめ合うと、
侑士くんは小さく呟いた。


「滝の次は跡部か」

「えっ?」

「俺ばっかり好きになってアホみたいやん」

「えっ?」

「ええ加減俺だけを見つめて欲しいんやけど」

この意味、もう言わんでも解るやろ?と眉を八の字にして寂しそうに笑う侑士くん。そんな顔をさせたくないのに、させてしまう自分が情けない。

「相手が跡部じゃ敵わへんやん」

「侑士くん、聞いて。私の本当の気持ち」

もう迷いはない。

「私がずっと恋焦がれているのは、侑士くん。すーーーー」

ひゅーーー
パァンパァン!

「ーーーって、花火!?」

すっかり窓の外が真っ暗になってしまっていた。そんな夜空に色とりどりの光の大輪の花が咲き誇る。こんなこと……。


「こないな派手なことする奴は、跡部やな」

「南の島以来だね、これ」

「そうやな、……んで、花火の音で聞こえんかったんやけど。葉月ちゃん、なんて言うた?」

顔が真っ赤やけど、と言う忍足くんの顔は先程とは違い妖しく笑っている。


「侑士くんのいけず!絶対解ってて言ってるよね!?」

「さあ?俺はなんも知らへんよ。そやけど」

期待してもええんやなと微笑む彼に私は恥ずかしかったけど、うんと頷いた。

「好きだよ、貴方だけを見つめてる」

END

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