番外編
□忍足くんとお誘い
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「あ、おはようさん。風宮さん」
「おはよう、忍足くん」
「ん?なんか元気ないな?」
「そうかな?」
首を傾げる私に忍足くんの手が伸びてくる。驚いて目を瞑ると、彼が触れたのは、私の額だった。「ん、熱はないな」と。
「び、びっくりした」
「ん?キスされるかと思うた?」
ニヤリと妖しく笑う忍足くん。私はそんな彼から目線を逸らして「あ、遊ばないでよね」と言い返す。恥ずかしくて顔が熱い。
「ははは、すまんすまん。んで、なんで元気がないん?」
「元気がないってわけじゃないの。ただ」
「ただ?」
彼が聞き返してきたので、
私は辺りを見渡した。
誰もいない。
「侑士くん、放課後、もし空いてるなら映画観に行かない?」
「葉月ちゃん、珍しいなぁ。自分からお誘いしてくれるやなんて」
「た、たまにはね。」
侑士くんの顔が見られない。
断られるんじゃないかって不安になる。
「ええよ、行こか。映画」
「!ほ、ほんと!?」
「ああ、で、何観るん?」
「えと、うちの親戚の伯父さんがチケットを譲ってくれたんだ。これなんだけど、」
「こ、これは…!」
「恋愛ものなんだけど、確か侑士くん好きだったよね?」
「おおきに、めっちゃ気になってたやつやん。観に行こうか悩んでて」
伯父さん、ええ趣味しとるな、と言う侑士くんは嬉しそうに笑っている。
「よ、よかった。断られるかと思った」
「何言ってるんや、葉月ちゃんの誘い俺が断るわけないやん。めっちゃ嬉しいわ」
「あ、ありがとう」
良かった。
本当に良かった。
「侑士くん、大好きだよ」
「!?な、なんやねん。突然」
「ううん、心の声を言ってみただけ」
私がそう笑うと侑士くんは珍しく少しだけ頬を赤らめて「おおきに。俺もめっちゃ好きやで」と小さく呟いた。
END