番外編

□忍足生誕祭2022
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「誕生日おめでとう!侑士!」

「岳人」

ほら、これ誕プレ!受け取れよ!と岳人がそう言って俺に箱を渡してきた。顔が若干ニヤついとる。

「岳人、その顔やめや。いたずらってすぐにわかってしまうわ」

はぁ、とため息を吐いた俺。
そう、今日は俺の誕生日。
また一つ歳を重ねた。

「なんだよ、その顔!悪かったな、彼女からの誕プレじゃなくて!」

「いや、すまん。誕プレは嬉しいわ。おおきに。」

「素直にそう言えよな!クソクソ」

「そやからすまんって」

従兄弟の謙也からは夜中に誕生日メールを貰い、誕プレは岳人が一番。
彼女からはまだ何もない。

まあ、あの子のことやから俺の誕生日を忘れてるってことはない。会えば、あのかあいらしい鈴のような声で祝ってくれる。

そう、思うてた。
やけど…。


「お、忍足くん!今いいかな!?」

「今日誕生日だよね!?」

「これ受け取ってください!」

「忍足先輩!私も先輩に渡したいものが!」

学園を歩くと女の子の群衆。跡部とちゃうけどモテる男はつらいなぁ。けど、もう少し静かな場所に行こか。

たとえば、そうあの給水塔へ。



「ゆ、侑士くん!?」

「なんや先客がおったんか。」

女の子たちを掻い潜って訪れたのは入学式で岳人と初めて話した給水塔。そこには彼女、葉月ちゃんが居った。瞬きを繰り返して驚く彼女を横目に俺は隣へと座る。静かな場所。


「侑士くん、なんでここに?」

「葉月ちゃんこそ、なんしてここに?」

「女の子達に追われてたところを向日くんが助けてくれたの」

「岳人が?」

「うん、ここなら人は来ないからって」

「ふーん、なんで追われてたん?」

俺がそう尋ねると葉月ちゃんが困ったように言った。「侑士くんが相手にしてくれないから女の子達が私にプレゼントとか渡すように頼まれて」と。

「受け取っちゃうとみんな渡そうとするからどう対処すればいいかわからなくなって」

「へえ、嫉妬とかせんの?」

「嫉妬か、うーん、最初は嫉妬してたと思うけど、」

「けど?」

「それだけ君がみんなに愛されてるんだなと思うようになってなんか私のちっぽけな嫉妬心より、大きな愛情が勝ったというか」

「へー愛情か」
「嬉しくないの?」
「やって俺、まだ自分の口からはっきりと何も言われてない」

ずっと会えるの楽しみにしてたんやで、と拗ねるように呟いた。そんな俺に葉月ちゃんは笑みを浮かべて耳打ちをする。

「侑士くん、お誕生日おめでとう」

ちゅっと頬に当たる柔らかなもの。これには流石の俺も驚いて触れた頬に手を当てる。そんな俺に彼女はふふと笑う。

「顔真っ赤!」

「う、うっさいわ!そ、それにこれだけじゃ足りへん!」

揶揄う彼女の両肩に手を掛ける。彼女は受け入れるように瞳を閉じる。ドキドキと動悸がおさまらない心臓。

流れに身を任せて、
俺も目を瞑って彼女の唇に触れる。

ひとつ。
重なったぬくもり。
離れて目を開ける。

見つめ合う瞳。
もう一度瞳を閉じてまた触れる。

好きが溢れてくる。
好きで好きでたまらない。

「ゆ、し」

彼女の口から零れ落ちる俺ん名前。
嬉しい。もっと。もっと。

「呼んでや、葉月」

「お誕生日おめでとう、侑士」

生まれてきてありがとう、
と言う彼女にまた唇を重ねた。



END

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