番外編

□忍足くんと後輩2
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「葉月ちゃん」

「侑士くん、ごめんね。特訓付き合ってもらって」

「それはええねん。やが、葉月ちゃんってテニススクールに通ってたんやな。初めて知ったわ」

「滝くんと跡部くんにしか話してないからね」

「滝はわかるけど。なんして跡部?」

自分らほんま見掛けによらず仲ええよな、と言う侑士くんに私はなんとも言えない笑みを浮かべた。跡部くんのことは不可抗力だから。あの試合の後、跡部財閥の情報網で色々調べたんだろうな。怖い。

ぎゅっと靴紐を結んで立ち上がる。
反対のコートには侑士くんがラケットのガットをいじっていた。

私たちは誰もいないストリートテニスで試合形式の練習をする。

「ほんまに1ゲームの試合形式でええんか?」

「お願いします」

「ほなら、サーブは葉月ちゃんで」

侑士くんから渡されたボール。

ずっと内緒にしてた。
跡部くんしか知らない私の本気。


「!(今んサーブは……)」

私はテニスが好きでテニスから逃げた。逃げた先にあったものは何もない。

爽太先輩が涼太くんの相手になって欲しいと頼まれたあの日に私はまたテニスに関わることになった。

最初は負けてばかりでつまらないと駄々をこねたり、本気を出さなかったら拗ねるとかもあったけど。涼太くんはそれでも私に挑んできた。涼太くんはずっと週一でもいいから練習に付き合って欲しいと言ってきた。私のことを理解した上で。

君はどのくらい強くなったかな?
それともこうなることを君は予測していた?

「自分、ほんまおもろいやっちゃなぁ。まさかこないな近くに強敵がおったやなんて」

私の放つサーブを返しながらラリーの応酬が続く。「攻めるん遅いわ」と先に仕掛けたのは侑士くんだった。最初から本気モードで嬉しかったりする。私は打ち上げられたロブにスマッシュを決める。ラケットを短く持って。

「な、なんや、これ」

侑士くんのカウンター技、
羆落としは決まらなかった。
ますます火のついた侑士くんとやりあう。
1ゲームだけなのになかなか決着がつかなくて気がつけば周りに群衆が出来ていた。

その中には、



「葉月姉、やっぱすげえ。戦うのが楽しみだ」

涼太くんの姿もあった。


END

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