番外編

□忍足くんと後輩3
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「葉月さん」

「涼太くん、今日はよろしく」

「それ、俺の台詞」

自由の森テニススクールでコートを一つ借りて、私と涼太くんは対峙する。みんな、そわそわしながらこちらの様子を見ていた。審判を務めるのは観月くん。審判台で彼は足を組み、前髪を人差し指で弄りながら「んふっ光栄です」と言う。

「なんで観月君がいるの?」

「もちろん風宮さんのデータを更新するためですよ。あと涼太くんもです」

「俺はついでか!」

「あわよくばお二人を我が聖ルドルフに転入さ」

「「まだ諦めてなかったの!?」」

私と涼太くんの声が重なる。それを聞いて聖ルドルフのメンバーが笑う。

「観月はなかなかしつこいだーね」

「2人は観月のお気に入りだからね」


「そこ、うるさいですよ。では、始めましょうか。ザ・ベストオブ・ワンセットマッチサービスプレイ・風宮トゥーサーブ!」



「……」

「なんだ、アイツが心配か?忍足」

「跡部、自分…前から彼女の身体能力知ってたんか」

「ふんっ、アイツは身体能力は抜群だが重度のプレッシャーやストレスには極度に弱い。それで体調を崩すこともあった。それに俺がアイツを"本当の意味"で知ったのは都大会が始まる前だったしな」

「そうか」


「F&S」
「くっ」

「ゲーム風宮ワンゲームトゥラブ、風宮リード」

「あ、あれは青学手塚の零式サーブ?」
「いや、Fって言ってたし」
「F?ふぁんとむ??」

私の放ったサーブに色々推測が立てられる。フォクシーオルカって言えたらいいんだけど、技名知られたらバレてしまう。


「く、あはは、嬉しいよ。葉月姉。やっぱ葉月姉には氷帝の高等部じゃなくてトウオウへ行って欲しい」

「!トウオウ?」

「そう、それが俺の望んでること」

涼太くんはあっさりと自分の望みを言った。勝ったら一つだけ言うことを聞いて欲しいとは言ってたけど、そう言うことだったのか。進路のことならますます負けられない。

自分の未来、
いや、彼と歩んでいく未来

そのために私は負けられない。


「ゲームセットウォンバイ風宮、6ー3」

「くっそ!いいとこまでいったのに!!」

悔しがる涼太くん。
私は久しぶりに激しく動いたのでふらふらだ。あ、やば倒れそ……。

傾きかける身体を誰かが抱き込むように支えてくれた。

「大丈夫か?葉月ちゃん」

「侑士くん、ありがとう。」

「お疲れさん、ええ試合やったで」

「ねえ、侑士くん」

「なんや?」

「もう少しだけこのままでいさせて」

「ええよ」

よう頑張った、と抱き締めてくれる侑士くんに甘えながら私の試合は終わった。

END

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