番外編

□愛を込めて刻印を
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ツッコミ不在


「あ、しまった!」

スマホである通販サイトを閲覧していた私。な、なんてことだ。仕事で忙しく、確認を怠っていた。

「なんや千紗さん、おっきい声出して」

隣で眠っていた忍足くんが声をかけてきたけれど、今の私にはそれどころではない。


「あー予約するの…忘れてた…」

「なんや指輪?」

うわっ!?と耳に掛かる掠れた甘い声に驚いてスマホを落としそうになる。忍足くんが私を後ろから包み込むように抱き締めてきた。そして、私の肩に顎を乗せながら、私が閲覧していた通販サイトを覗き込む。

そう、指輪だ。
それもただの指輪ではない。

「俺ん名前って、ほんま千紗さんは俺んことが好きやな」

「うっ、お見苦しいところをお見せしてすいません。」

『yushi』と刻印された指輪。
そう忍足くんの名前が刻印された指輪。
忍足くんファンなら喉から手が出るほど欲しい指輪のネックレス。

「それにしても高いファングッズやな」

冷静にそう言い放つ忍足くん。

「いや、大人を標的にしてるアイテムだから」

値段はあまり気にしてない。
何故なら夢を買うのだから。
そんな私の言動に忍足くんはさらに私を抱きしめる力を強めた。

「ちょっ、忍足くん!?」

「そんなどこの誰がつけた刻印なんかより俺自身のを受け取ってほしいわ」

耳元で囁く甘い声。
首元に掛かる吐息。

「い、いやいや忍足くん、あの」

それって、と言う前に首元を思いっきり噛まれた。

「痛っ!」
「おっ、めっちゃキレイに歯形が付いたわ」

「で、でしょうね。」

後で鏡で確認しといてや、と上機嫌な彼にそんなの見なくてもわかるよと思う私。すごく痛かったもの。

「それにな、俺が千紗さんに贈るわ。指輪」

「えっ?いやいやそんな」

と言うか、それって、

「将来が楽しみやね、色々と」

そう言って、今度は私の左の薬指に自分の手を重ねる彼。ますます上機嫌な彼に。私はますます困惑する。しかし、彼が楽しみにしているのなら私も将来に希望を持つことにした。

「(再販しますように!)」

「(どんなシュチュエーションで指輪渡して千紗が驚くか楽しみやなぁ)」

それぞれの思惑はまた別として。


END

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