番外編

□遅れてきたApril fool2023
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「ずっと前から君のこといいなと思ってたんだ。何かの縁かもだし」

俺と連絡先交換しない?と放課後、他校の制服を着た男子生徒がそう言ってきた。私は首を横に振って言った。

「ごめんなさい。私はあなたのこと知らない。」

そんな人と連絡先は交換したくない。
その思いが伝わったのか、男子生徒はますます笑顔で詰め寄ってくる。

「実を言うと俺も君のこと知らない。ほら、これでイーブンだろ?それにこれから知っていけばいいし。」

まずはお試しって感じでもいいからさ、と笑みを浮かべてぐいぐいと来る男子生徒。私はその笑みが怖く感じた。


「私、付き合っている人がいるの」

「えー、そんな見え透いた嘘つかなくてもいいじゃん。それに俺のほうが君を幸せに出来るし」

なかなか引かない男子生徒。そんな人にますます困っていると後ろから誰かが駆け寄ってくる音が聞こえた。その男子生徒からは誰が駆け寄ってきたのかわかるのかだんだんと顔が引き攣ってきた。

そして、私は後ろから強い力で引っ張られ抱き止められる。この腕は彼だ。

「お、忍足くん」

「嘘だろ。付き合ってるやつってあの忍足!?」

驚く男子生徒に忍足くんはますます私を抱き締める力を強めた。

「嘘ちゃうわ。この子は俺ん女や。気安く口説かんでくれるか」

低い声で言う忍足くん。それに、なと忍足くんは言った。

「お前らの考えた嘘遊びに付き合うほど、この子は暇やない。」

「なっ!?」

「わかったらさっさと学園から出てけ、そんで仲間にも俺ん女に手ぇ出すなて伝えとけ!」

忍足くんにそう言われて男子生徒は慌ててその場を走り去っていく。私と忍足くんの2人きりになったところで、彼は腕の中から私を解放した。私は忍足くんの方に振り返った。

「来てくれてありがとう」

目を見てお礼を言うと、「当たり前やん」と忍足くんは目を細めて私の頭を撫でる。


「April foolってもう終わったと思ってた」

「せやな、俺もそう思ってたわ」

「まさか他校の生徒の罰ゲームに付き合わされるなんて」

「ジローから知らされた時は気が気やなかったで」

ほんまに何もなくて良かったわ。ともう一度抱き締められる。温かい彼の腕の中で、私も離れたくなくて彼の背中に腕を回した。

先ほどまでわからなかったけれど、慌てて走ってきてくれたのか、彼の心臓はドキドキと脈打って息も少し荒い。ユニホームから洗剤と汗の混じった匂い。


ああ、侑士くんが好き。

この気持ちに嘘なんかない。


END

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