番外編

□街角デート
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「あのっ!今いいですか?」

「え?わ、私!?」

忍足くんが来るのを駅で待っていると、突然マイクを持った男の人に声を掛けられた。その奥にはカメラマンや音声さんなどもいる。

「あなたは今、何をしてるんですか?」

「えと、人を待ってます」

「人、と言うことは男性ですか?女性ですか?」

「男性ですけど、「葉月ちゃんっ!大丈夫か!?」ゆ、侑士くん!?」

「あ、待ち人が来ましたね」

「だ、誰や、こい…じゃなくてこの人らは!?ってマイク!?」

「あ、ごめんなさい。わたくしども今駅前で取材していまして彼女に声を掛けさせて頂きました。」

驚かせてしまって申し訳ございません。と謝るリポーターの男性に現状を把握したのか忍足くんはすんっと冷静さを取り戻し落ち着いた声で「そうですか。」と返す。


「ちなみにお二人のご関係は?」

「どう見えます?」

リポーターの男性の質問に忍足くんは質問で返す。男性は「えと、恋人ですか?」と困りながら忍足くんにまた問う。


「ヒミツです」

「なんでやねん!質問の答えになってへんやんか!」

「ナイスツッコミや!さすが相方」

「相方ちゃうわ!」

忍足くんの返しにまたツッコミを入れてしまった。条件反射ってこわい。リポーターの男性は「アハハ、仲が良いですね」と言った。


「今からどこへ行くんですか?」

「スイパラです」

「スイパラ!ケーキバイキングいいですね!」

やっぱり恋人同士だったんですね、と今度は微笑ましい表情をする男性リポーター。
忍足くんはどや顔してたけれど、私は私で苦笑い。そんなこんなで彼らとは別れて私たちはスイパラに向かった。


「スイパラってほんまにケーキだらけやな」

「まあスイーツパラダイスだからね。あ、あそこにパスタとかカレーとかサラダとかあるよ」

「パスタのソースは6種類か」

「サラダ美味しそう!」

「パプリカがええアクセントになっとるなぁ」

それぞれ食べたいものの場所へと向かう。すると、「あれ?風宮」と声を掛けられた。振り返ると、お皿に何十種類ものケーキを乗せた丸井くんがいた。「丸井くん!?」と驚いていると、丸井くんは「ああ、スイパラ行くってここだったのか。」と何処か納得した様子で言う。その様子に私はえ?となっていると「忍足とさっきTVに出てただろぃ」と返ってきた。

テレビに出てた?
待って、まさか……。

「あ、いた。本当に忍足とデートだったんだな」

「そやからさっきも言うたやん。」

「それは邪魔して悪いな」

そこへジャッカルくんと忍足くんもやってきた。どうやら先程の取材は生放送でテレビに流れていたそうだ。自分の学校もそうだけれど、他校で仲良い方々から次々と連絡が入っていた。

私、今度こそ殺されるかもしれない。
忍足侑士ファンクラブに。

そう思いながらご飯を食べることになり、生きた心地がしなかった。そうとは知らず忍足くんはいつものポーカーフェイスはなしでにこにこと甘くて少し苦手なはずのケーキを黙々と食べていた。すごくレアな一面を見ながら、生放送のことは少しだけ忘れて彼と一緒にケーキバイキングを楽しんだ。ああ、甘酸っぱいな。と言いながら。

END

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