番外編

□彼女の事情
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※まだ氷帝がUー17に行く前のお話


「今更だけど、風宮さんってなんで喫茶店のお手伝いしてるの?」

え、今更?と思いながら滝くんの質問に「伯父さんにはお世話になってるから」と答えた。

「母さんが心配症で仕事に行ってる間、伯父さんの喫茶店で時間を潰してたのが始まりかなぁ」

そうなんだ!と滝くんと話していると宍戸くんから「風宮、呼ばれてるぞ」と言われ廊下を見ると見慣れた女の子がいた。滝くんに別れを告げて女の子の元へとやってくると早々に「ちょっとつきあってもらってもいいかしら?」と。



「風宮さん、見たわよ」

テレビ、と前で腕を組んで仁王立ちする女の子。場所は屋上で彼女の後ろにも女の子たちはいる。私は渇いた笑いしか出てこない。ああ、忍足侑士ファンクラブだ。
わかってたけど、とうとう今日で死ぬのか。明日、机の上に白い菊の花があったら、って死んだらもうわからないか。


「あなた、忍足くんと付き合ってるんですってね」

私達は告白して玉砕しているのに、どうしてあなたはいいのよ。と呟く彼女。ものすごっい視線を感じる。つま先から頭の上まで値踏みされているようだ。

「眼鏡が邪魔だわ。」

つかつかと目の前までやってきて眼鏡に指を伸ばしてくる。

「ちょっ!眼鏡はやめて!」

「うるさいわね。ちょっと抑えてて」

彼女の言葉に女の子たちは「こんな事して、忍足くんに怒られないかな?」と言いながら私を拘束する。


「これで眼鏡2代目なんですけど!」

「壊しはしないわよ。だいたいこんな眼鏡しているなんて目が小さくて忍足くんの隣に相応しいわけが…!」

眼鏡を外されて、視界はなにも見えない。そして強気な彼女も急に静かになった。

「あ、あの…眼鏡返して」

「あ、ええ。いいわよ」

先ほどよりもそっと静かに外した眼鏡をかけ直してくれる。見えなかった視界がクリアになり、何故か彼女は顔を赤くしていた。

「ど、どうしたの?」

「な、なんでもないわよ!みんな行くわよ」

ギャップ萌えだなんて不意打ちだわ!と叫び女の子達を引き連れて何処かへ行ってしまった。私は訳が分からずぽつんと1人その場に取り残された。

「な、なんだったの?」

何もなかったってことは明日、私の席に白い菊の花はなくなったってこと?

「よ、良かった」

「ほんまやわ」

え?と声の聞こえたほうに振り返ると忍足くんがいた。「宍戸や滝に聞いてきたんやけどなんもなくて良かったわ」と。

「いつからいたの?」

「"ギャップ萌えなんて不意打ちだわ!"の辺りから」

眼鏡壊されると思って出るに出れんかったすまん、と謝られる。


「ううん、来てくれてありがとう」

「おん、あと言うとくけど、俺は眼鏡があってもなくても葉月ちゃんのこと好きやからな」

そう言うと、顎に手を添えられて忍足くんの顔が近くなる。突然のことで反応できずにいると、「あれ〜?2人とも何してんの?」と言う声が聞こえて眼鏡と眼鏡がぶつかった。キスは私たちにはまだ早かったみたい。

END

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