番外編

□彼の知らない私の秘密
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「風宮」

「跡部くん?」

ちょっといいか?と深刻そうな表情を浮かべた彼に私は頷いた。「放課後、生徒会室へ来い」と小さな声で呟いた。もう一度、私が頷くと跡部くんは去っていった。


「風宮さん」

「あ、忍足くん」

「跡部と何話してたん?」

「前に提出した書類に不備があったから放課後に来いって」

「つまり、呼び出しやな」

そうだよ、と頷くと忍足くんは大変やなと言った。予鈴のチャイムが鳴り、その場で別れた。


「跡部会長、3年の風宮です」

放課後、生徒会室の扉をコンコンと叩くと、中から「入れ」と声が聞こえた。

「失礼します」

ガチャと扉を開けて、
中に入って扉を閉めた。

「少し待っててくれ」

跡部くんにそう言われてソファに腰掛ける。いつもは樺地くんもいるのだけれど、今日は彼はいないみたいだ。

「風宮」

「仕事終わったの?」

まあな、と向かいのソファに腰掛ける跡部くん。書類整理をしていたのか少しだけ疲れているようだ。

「それで話というのは、」
「単刀直入で言う、お前の個人情報、再度調べ直した。どう言うわけか更新されていた。」

「えっ?」

「以前までは存在していなかった学校名も出身地も生まれた病院も存在していた」

どういうことだ?と問われる。

「どうと言われても、私は知らないよ。それに存在していたならそれで問題ないでしょう?」

私は私なんだから、と言うと跡部くんは納得していないようだ。やはり跡部財閥の情報網怖い。

「問題大有りだ。お前は、"この世界の人間"じゃねぇんだろ?」

跡部くんの言葉に、
私は口を閉ざしてしまった。

突きつけられた真実。
彼の言うとおり、私は…

ガチャ

「跡部、そろそろ俺の彼女返してくれへん?」

「「!」」

まさかの忍足くんの登場に驚く私と跡部くん。忍足くん、今の話……


「忍足、入るなら声をかけろ。」

「すまんな。で、2人の話は終わったん?」


忍足くんの言葉に跡部くんは「まあな」と頷いた。


「そうか、ほな。帰ろうか」

そう言って扉を開けて生徒会室を出ていく忍足くん。私は跡部くんを見ると彼は不敵な笑みを浮かべて「早くいけ」と言われた。
え、もういいの?と思いながら、忍足くんを追いかけて、生徒会室を出ていく。



「……」

「……」


「なあ、」

沈黙の末、忍足くんが先に口を開いた。私は「なに?」と忍足くんを見つめた。彼は「前に俺が言うたこと覚えとる?」と言った。


「前、話した夢の話」

「夢の話?」

「おん、君だけがおらん、夢を見た話」

「そー言えば、そんなことあったね。確か”君が居らんかったら誰が俺のボケを突っ込んでくれるんや”って言ってたね」

「それ、今もやから」

そう言って忍足くんは私の手に自分の手を重ねた。

私は怖い。
いつか彼の前から消えてしまうこと。
私の世界にいる中学生の”わたし”と入れ替わる時が来たら……

彼の前で今までの振る舞いは多分できない。


「そんな顔、せんといて」

「ち、近いよ」

忍足くんの顔が近づいてきて、
額と額がぴったり合わさる。
まるでどこかで見た恋愛映画のように、
窓から入る夕陽が私と忍足くんを照らす。



「これも覚えといてや。俺は今のままの”お前”が好きや。やから、何があっても俺の傍から離れていかんといて」

「忍足くんのいけず…」

「真っ赤な顔して言わんといて」

キスしたくなる、と言われ、
私と忍足くんの影が重なった。


END

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